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工学院 IB型考える授業公開(5)

今回の公開授業は、フィールドワーク、個人ワーク、PIL、PBLという一連のアクティブラーニングの手法を一望できたと同時に、中1から高3までの発達段階に応じて、そのようなアクティブラーニングの構成要素の組合わせによる≪衡平≫の創意工夫も感じられた。

中1のアクティブラーニングの創意工夫;講義→個人ワーク→PBL→プレゼン

中1の地理では、いきなり個人ワークを行うのではなく、ICTと黒板の両方を活用して講義をして知識の整理をしてから、それらの知識を活用して、ある程度見通しがつく、それでいて正解は一つでないフロークエスチョンを投じていた。

工学院 IB型考える授業公開(4)

PBLを授業で行うことはいかにして可能か?本来、1つのテーマについて数か月、1年、あるいは3年間ぐらい探求を深めていく学び合いの体験がPBL( Project Based Learning)と呼ばれている。それだけに、このPBLは生徒1人ひとりの世界観を広げ深めていくし、チームワークやリーダーシップ、メンターなどのコミュニケーション行為も育てていく。

しかし、21世紀型教育では、授業は知識を教えるのではなく、知識を活用する方法や好奇心を公共的な関心に広げていく学び方を学ぶことが目的になっている。というのであれば、PBL的な学び方、学ぶ意欲を授業で学ぶことは可能なはずである。

実際IB(国際バカロレア)のプログラムはそのようになっているわけだから、大学や企業における研究や開発のためのPBLではなく、学び方、学ぶ意欲、多角的な考え方、多様な発想法を学ぶ場として授業を捉え返そうとしているのが工学院の教師なのである。

工学院 IB型考える授業公開(3)

大学入試改革一体型の新学習指導要領に向けて改定作業がスタートしている。新学習指導要領の眼目は脱知識偏重教育。それを実現するために思考の過程を重視するアクティブラーニングが注目を浴びている。時同じくして、東大や京大の教授陣中心に、「聞くだけの授業は終わりにしよう」というインタラクティブティーチングの講義が、オンラインで行われる。大学の教員、中高の教員が主な対象者。

子どもたちの未来が開かれる期待が大きいが、残念ながら、すぐにアクティブラーニングの理論が教育現場の実践に結びつかない。というのも実践の経験値をくみ上げることが、現状では難しいからだ。なぜなら、今まで一方通行型講義形式でやってきたのだから、広くアクティブラーニングのサンプリングやプロトタイプがないのは当然だ。

そんな中、工学院は挑戦者として、手探りではあろうが、アクティブラーニングに学校全体で取り組み、自らプロトタイプを模索している。

(まずは、自分なりの考えをワークシートに整理していく)

工学院 IB型考える授業公開(2)

今週から、文科省はいよいよ学習指導要領改定の作業に入る。2019年から2021年にかけて段階的に実施する予定の大学入試改革一体型の学習指導要領改定の作業である。

大学入試が従来型の一点刻みの知識定着度を評価する試験から、学びの体験や高度な思考力など人間力全体を評価する入試にシフトするのに伴い、小中高の学習指導要領も「思考力・判断力・主体性」を重視し、脱知識偏重というカリキュラムイノベーションを開始する。そして、そのためには授業も一方通行的講義形式からインタラクティブティーチングやアクティブラーニングに転換する予定。

工学院は、このような動きを、先行して動いていた世界全体のグローバルラーニングの潮流から読み解き、すでに先駆けてカリキュラムイノベーションに挑んでいる。今回の公開授業は、その準備段階の様子をありのままに公開した。

問答法

工学院 IB型考える授業公開(1)

工学院は、2015年に入学する中1生から、3つの新しいコースを開設する。「ハイブリッドインタークラス」「ハイブリッド特進クラス」「ハイブリッド特進理数クラス」。また、2018年には、高1から「IB日本語DPコース」「文理特進コース」「医歯薬サイエンスコース」を設置する予定。

要は、文科省もスーパーグローバル大学を指定し、世界大学ランキング100位内の大学に肩を並べようとしているところからもわかるように、日本の大学受験勉強がグローバル大学入学準備教育に変化しようとしている。

工学院も、この動きを見通して、着々と準備を進めているが、その中間発表として、3日間に渡る公開授業を行っているので、取材した。by 本間勇人:私立学校研究家

工学院 英語科ミーティングのスナップ

工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)は、来春の中1からハイブリッドインターナショナルクラスを設置する。英語以外の数学や理科などもイマージョン率を上げていくクラス。授業のシステムや思考力育成のシステムは、IB型(国際バカロレア型)で、対話、ディスカッション、プレゼンテーション、深い洞察に基づいたエッセイなどハイレベルの教育。

そして、その教育を偏差値がそう高くなくても意欲に燃え、考えるコトが好きな生徒にも開放する。 そのためには、教師陣の授業力・教師力・対話力、そして英語力には、今までの日本の教育ではちょっと想像できないほどのソフトパワーが開発されなければならない。

そこで、昨年から工学院は、IB型の教師力向上のために、様々な研修を行ってきた。そして、各教科のミーティングで、自主研修ができるまでに進化した。英語科のミーティングは英語で行われるが、たまには学校から出て、研修センターで思い切りミーティングをやろうじゃないかということになった。by 本間勇人:私立学校研究家

(工学院大学の研修施設で、英語科ミーティングは行われた)

工学院 教師はリスクテイカー(3)

加藤先生の授業に続き、田中先生の高2の英語の授業を取材。そして、驚いた。やはり電子黒板、ノートパソコン、デジタル教科書、インターネットというICTを駆使しつつ、PBLでリベラルアーツまで行っていたからであり、加藤先生と同じある意味IB(国際バカロレア)スタイルの授業になっていたからだ。

IBスタイルの授業とは、グローバル教育、イノベーション教育、リベラルアーツがPBLという対話型授業を介して有機的に統合されている学びの環境をいう。

(授業開始前から、生徒と対話しながら行う授業の準備は、ICT環境の整備から。工学院の教師は、ラップトップやタブレットを持ち歩いて、クラス移動をする)

工学院 教師はリスクテイカー(2)

加藤先生は、高1の英語の授業を≪PIL≫の手法で展開した。≪PIL≫とは≪Peer Instruction Lecture≫の略で、発案者はハーバード大学のエリック・マズール教授。そのスタイルはバリエーションがいっぱいあるが、基本は、聞くだけの授業から生徒が互いの考え方をシェアし、脳を活用する機会を、講義の中に埋め込む授業にシフトすること。

加藤先生の≪PIL≫は、iPadのアプリを活用した新しい手法。マズール教授は1990年代に、クリッカーという装置をパソコンと連動して実施したが、その後パソコンの進化は目覚ましく、クリッカーに替わるアプリがどんどん登場している。加藤先生は、クリッカーではなく、キャノンスキャンという写真をすぐにPDFに自動変換するアプリを活用した。

工学院 教師はリスクテイカー(1)

来春中1からハイブリッドインタークラスを実施する工学院大学附属中学校・高等学校。その準備は着々と進んでいる。グローバル教育、イノベーション教育、リベラルアーツを有機的にリンクさせたカリキュラムイノベーションを行っている真っ只中である。

英語科の加藤先生も中心的な推進者の1人で、デジタル教科書と電子黒板を使いながらPBL(プロジェクト型学習)を行うときはマイクロソフトのノートパソコンを使い、デジタル教科書を使いながらPIL(ピアインストラクション講義)を行うときは、iPadを駆使し、来春からのハイブリッドインタークラス開設や2018年に挑戦する国際バカロレアのディプロマの準備を進めている。by 本間勇人:私立学校研究家

(中3の分割授業は、PBLスタイルで行われた)

工学院「科学教室」 IB学習者像の創出(3)

IBの10の学習者像育成の土台が、工学院にはすでにあることは了解できた。ただし、IBでは、行事や部活で、その学びを行うのではなく、授業そのものでトレーニングできるようになっている。

一般に日本の教育は、授業は知識を教える講義形式で、工学院のように科学教室のようなチャンスがないところでは、部活に依存するから、その部員でないない場合、10の学習者像を身につける場がない。

工学院の場合は、このようなチャンスは科学教室としてあるが、IBレベルの教育に挑戦するとなると、授業そのものに、すでにある土台を埋め込まなければならない。果たしてそれはどうなっているのだろうか。

もちろん、授業の中に、対話型、討論型の授業=PIL×PBLを埋め込むということが、プレスリリースで高らかに謳われている。しかし実際にはどうなのだろうか?言うまでもなく試行錯誤はスタートしている。

(POP作りや創作のアート活動、図書館運営の活動、読み聞かせのボランティア活動に挑戦している図書館委員。IBのCASのプログラムをすでに実践している)

工学院「科学教室」 IB学習者像の創出(2)

工学院の中学生が、好奇心のゲートをくぐり抜け、世界を探求する道を歩き始めているのを了解できた。今度は高校生の活動を見に行った。するとIBの10の学習者像すべてが融合しているのがわかった。

(グローバルイシューの大きな問題である環境問題に取り組む未来のエンジニア)

工学院「科学教室」 IB学習者像の創出(1)

今年も工学院大学附属中学校・高等学校が、大学と連携して「科学教室」を開催した。10000人規模が参加する日本でも有数の大サイエンス祭り。今年7月23日(水)、工学院大学新宿キャンパスで、同大学附属中学校・高等学校は、プレスリリースを実施。

テーマは「工学院大学附属中学校が21世紀型一貫教育をスタート 日本初のハイブリッドインタークラスを開設~大学で 企業で 世界でスカウトされるグローバル人材を育てる」。いよいよIB級の教育デザインに大きく歩を進める意志が表明された。そこでIB(国際バカロレア)のlearner profile(10の学習者像)が端的に映し出される「科学教室」に接近した。by 本間勇人:私立学校研究家

(工学院のリケジョ)

工学院 日本初HBインタークラス開設(3)

工学院は、日本初の大胆なカリキュラムイノベーションを歩み始めたわけだが、そのためには学内の教師が一丸になることが極めて重要である。一丸になるには、教師どうしの信頼関係をベースにした相互に学ぶ組織を持続することである。そのため、平方校長は「研修」を中心とした「学びの組織」を構築しているという。

工学院 日本初HBインタークラス開設(2)

工学院は、2015年に入学する中1生から、3つの新しいコースを開設する。「ハイブリッドインタークラス」「ハイブリッド特進クラス」「ハイブリッド特進理数クラス」。それぞれ募集人数は、35名ずつ。彼らが卒業するときには、東京オリンピックのつぎの年で、日本は相当グローバルな社会になっているはずである。

そのときに、グローバル人材として活躍するには、CEFR基準でC1英語力、ICTによるデータサイエンス力、IBレベルの高次思考力(IB型思考力)である。どのクラスもこの3つの力は工学院の教育の基礎とするが、その学びの方法に違いがある。

工学院 日本初HBインタークラス開設(1)

7月23日(水)、工学院大学新宿キャンパスで、同大学附属中学校・高等学校は、プレスリリースを実施。テーマは「工学院大学附属中学校が21世紀型一貫教育をスタート 日本初のハイブリッドインタークラスを開設~大学で 企業で 世界でスカウトされるグローバル人材を育てる」。

2018年から2030年までに、日本は、世界の人々といっしょに生活する多様性に満ちた社会や学校に移行している。工学院はいちはやくその新しい世界に備え、そこでリーダーシップを発揮できる人材を育成する教育を整備する。by 本間勇人:私立学校研究家

工学院 PIL×PBLで数学的思考

工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)は、世界標準の教育を目指している。そのためには、授業改革が最優先事項であるとし、講義型→PIL×PBLにシフトしている。すでに国語と英語と化学はそのプロトタイプづくりに着手している。社会科は新聞を活用した大型のプロジェクト学習が確立している。

当初数学は難しいのではないかと思われていたし、多くの学校でもそのイメージが濃厚である。ところが、工学院の数学の先生は、次々と翼を広げ飛びたっている。by 本間勇人:私立学校研究家

奥津先生(進路指導部部長)は、個人ワークシートとグループワークシートに小さくそして大きな飛躍のための仕掛けをする。生徒は個人ワークのときは、演習さながらであるが、それがグループワークになったとたんに、演習という具体的な体験から数学的発想へと一般化する議論をしていることに気づく。

工学院 HBインタークラスの英語教育 準備開始

工学院大学附属中学・高等学校(以降「工学院」)は、2015年4月から中学の新クラスを開設する。それは「ハイブリッドインタークラス」「ハイブリッド特進クラス」「ハイブリッド特進理数クラス」の3つ。ハイブリッド(HB)というのは、数学や理科などでも英語を交えながら授業を行っていく予定だからである。

21世紀型教育の重要性を認識し、グローバル教育をけん引している同校にとって、各教科でイマージョン率を徐々に高めていくのは当然だということだ。来年クラスを新設するために様々な取り組みがなされているが、今回は中1の英語体験者・帰国生のための取り出し授業を見学した。by 本間勇人:私立学校研究家

工学院 PIL×PBLを全面展開へ(3)

PIL×PBLの授業のプロトタイプづくり始まる

カリキュラムイノベーションチームは、議論をしているだけではない。同時に自らの授業でPILとPBLの授業のモデルやプロトタイプづくりも行っていく。生徒の学力をさらに伸ばすために、当然その結果として、大学進学実績が伸びるようにという信念は当然固い。

工学院 PIL×PBLを全面展開へ(2)

カリキュラムイノベーションチームはPBL型開発

知的なプログラムの開発をするときには、まずはビジョンを共有する。ただし、その段階でのビジョンは、ある程度の共有はするが、未規定性のままの仮説。試行錯誤の開発が進むにつれて細かいところは変わっていける柔軟な「アソビ」は残すということのようである。

工学院 PIL×PBLを全面展開へ(1)

工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)の校長平方邦行先生は、工学院の目差す21世紀型教育を実行するとは、授業改革をおいて他にないという信念を学内外の先生方、生徒、保護者にことあるごとに語る。

知識を伝え、記憶するだけの20世紀型教育から、知識そのものも吟味しながら、知識と知識を組み合わせたり、組み替えたりしながら、自ら発見した問題を解決していくIB型思考力はいかにして可能か。それは米国ハーバード大学やMITなどが先進的に開発してきたPILやPBLの授業の本質を踏まえた授業改革によって可能になると。

今年一年かけて工学院の先生方が、校長と共に一丸となって研究に取り組む。日本の教育が変わる瞬間をドキュメンタリー風に追跡取材していく。by 本間勇人:私立学校研究家

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