PBL
東京女子学園 教師と生徒が学ぶ組織
今年3月、東京女子学園は、今までプロジェクト単位で行ってきた学習する組織が、一転して全体に広がった。それは、iPadが教師全員に配られたからだ。今のところは、企業が作成したWeb ベースの学習システムの活用方法を日々研鑽しているが、クラウド上の教材やアーカイブうなどを活用し、テストもできるから、たんなる技術面の話ではなく、授業や面談のあり方も大変化することになる。by 本間勇人 私立学校研究家
何よりも5月から生徒全員が所有するようになる。すると、授業風景はあっという間に一変するだろう。そのシーンは、デジタル・ネイティブの子供のいる家庭はだいたい想像がつくだろう。そして、そうでないときの授業に比べてワクワクする気持ちを抑えられないだろう。
しかし、本当のおもしろさは、これからなのである。現状の学習システムは、スキルと能力の徹底した管理システムで、大学合格実績を大いに向上するのに役立つだろう。ところが、昨今共学化の波がおさまらない時代だ。それだけでは、女子校としては、共学校を突き抜けることができない。波に押し切られてしまう。
特に、日本社会は、先進諸国の中で、女子の社会進出は低く、ジェンダーギャップの格差もありすぎる酷い社会だと世界から観られている。グローバル社会にあって、何よりこの汚名を払拭しなければならないときに、それが唯一可能な女子校という拠点が消えていくのはなんとももったいない。
哲学の土台のある東京女子学園であればこそ、そこは極めて重要なミッションだ。
実は、東京女子学園は、この抑圧社会日本を幸せに導く教育のプログラムが潜在的にある。それは昨年、プロジェクトチームが中心となってつくった「地球思考コード」である。これは、東京女子学園が教育で行っていく思考力の広さと深さのチャートになっている。つまり、知識・スキル・能力のみならず1人ひとりの才能を開発する教養の幅を示唆している。
授業やテスト、面談は、このコードに紐づいて行われるのだが、昨年まではそれはすぐにできなかった。なぜなら、それにはICTによって、地球思考コードごとに成績推移が集計される必要があったからだ。
今回の教師も生徒もiPadを1人1台使えるようになったことで、このことが可能になる。もちろん、その開発には涙ぐましい研究と研鑽が必要だ。しかし、それは教師にとっても生徒にとっても未知との遭遇を意味する。まだ、どこの学校でもそれを行っていない。だからこそ、挑戦する価値があるのだ。
授業という「いまここ」での未知との遭遇。それは教師と生徒が共に学ぶ格好の場である。そして、その場は、日本社会の女性の生き方の希望の灯火となろう。それは、日本社会全体にとって善き知らせである。
工学院 前人未到の新教育イノベーション始まる
工学院大学附属中学校・高等学校は、前人未到の新教育イノベーションを開始した。戦後の学習指導要領の歴史は、J.デューイの経験主義教育とJ.S.ブルーナーの系統主義教育の両極の間を振り子のように行ったり来たりした。その過程でデューイの考え方やブルーナーの考え方は形骸化して、問題解決能力か知識暗記力かという浅薄な二元論に陥った。
21世紀型教育ビジョンを映し出している工学院は、どちらか一方を選択するのではなく、生徒の成長、生徒の生き方、生徒の変容、生徒の才能などに目配りした複合的な学びの理論やそれが育成される環境イノベーションを揃えてきた。by 本間勇人 私立学校研究家
(左から、奥津先生、岡部先生、松山先生、平方校長、島田先生、株式会社メイツ副社長伊藤氏)
新高1は、4月1週目、2泊3日のオリエンテーションを行ったが、その際のリフレクションは、タブレットやラップトップで入力、チェックボタンの項目は、瞬時に、スプレッドシートに書き込まれ、個人別、クラス別、男女別などの集計もまとまる。その段階でGrowth Mindsetの状態が、どうだったか先生方は共有できる。生徒と共に手ごたえを感じ、新高1の学園生活が始まったのである。
2週間後、上記写真のカリキュラムマネジメントチームが集まって、200字記述のデータ分析結果も掛け合わせて、生徒一人ひとりの状況やクラスの状況などをリフレクションをした。夏前にもう一度集計するから、生徒の変容など様々な特徴があらわれてくる。ふだん接している先生方のリアルな感覚と生徒が自己リフレクションしたときの感覚のマッチングを行うのだ。
このシステムは、今年一年行ってプロトタイプができるが、外部スタッフとのコラボレーションによってそれは可能になった。パッケージ商品を導入するのではなく、教師や生徒の実態に合わせて、リサーチ機能コンテンツをデザインし、分析システムをプログラミングしていく。教育コンテンツとエンジニアリングとデザイン思考。綿密かつ効率の良い会議システムの流れによって可能になる。
リアルスペースにおける会議は1時間と決め、その前後で、共有ファイルや共有議事録に書き込みながら、課題意識をシェアして立ち臨む。議論は、何を解決し、次にどう生かすか。さらに何を行うか。
カリキュラムマネジメントシステムとは、「思考コード」をベースに知のマネジメントをしていくことだが、その知を限りある時間の中で、生徒が最大限力を発揮できるようにする舞台裏の強力なサポートシステムこそが重要である。
この領域は外からなかなか見えない。授業という領域で、21世紀型教育の教育イノベーションは華やかに見えるが、それは氷山の一角。水面下にあるサポートシステムは複雑複合的。学習理論とカウンセリングマインド。データサイエンティスト的視点、そしてエンジニアリング頭脳。これらが効率よく循環するシステムが欠かせない。言うまでもなく、この部分は、今までの学校になかった新教育イノベーションである。
アサンプション国際と香里ヌヴェール学院 本機構に加盟
大阪カトリック2校であるアサンプション国際と香里ヌヴェール学院が、いよいよ21世紀型教育機構に加盟。両校は、昨年、21世紀型教育改革、共学校化を宣言し、PBL、イマージョン教育、ICT教育の研修を行ってきた。その過程で、カトリックの精神であり、国連のあらゆる宗教、民族、性別を超えた共通の理念でもあるman for othersというMFOマインドを共有し、世界の痛みを解決するグローバルシチズンシップというメンタルモデルをもった学習する組織が出来上がった。
そして、今春、その両校の協働改革は、小学校と高校の大人気という結果を導いた。もちろんこの改革は始まったばかりである。来春小学校、中学校、高校とすべてにおいて大反響を得るべく日々熱心に取り組んでいる。
そのインパクトはすでに、関西圏の教育に子どもたちの未来のための21世紀型教育改革をという大きなウネリを生み始めてもいる。
大阪カトリック2校の21世紀型教育改革のトータルリーダーは、聖パウロ学園の理事長であり、21世紀型教育機構の副理事長でもあり、何といっても、日本カトリック学校連盟会長である高橋博先生が辣腕をふるっている。
(高橋先生は、ご自身の学校である聖パウロ学園の21世紀型教育改革の研修のファシリテーターも行っている。)
アサンプション国際中学校・高等学校の校長は、江川昭夫先生。自ら英語の教師として、校長哲学対話をアルベール先生と実施。英語も使って生徒と対話する実践的改革を行っている。
香里ヌヴェール学院の改革リーダーは、石川一郎学院長。「2020年の大学入試問題(講談社現代新書)」「2020年からの教師問題{ベスト新書)」の執筆でも有名で、日本全国を飛び回って講演活動もされている。最先端の21世紀型教育を香里ヌヴェール学院の先生方と共に創っている。
21世紀型教育機構加盟校は、東京から埼玉、静岡、大阪へと全国に広がり始めた。この21世紀型教育改革を断行することは、子どもたちと共にいまここで未来を手に入れることを意味する。全国に広がること。それは希望が同時に拡大することである。
八雲学園 共学化への準備着々 St.Andrew’s School Turiとの交流
工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(3)ザ・リフレクション
工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(2)自分の殻を破る信頼関係
工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(1)自分を表現し、自分というキャラクターを形成する5つの要素の関係に気づくワークショップ
【速報】静岡聖光学院中学校・高等学校 21世紀型教育機構に加盟!
静岡聖光学院は、アカデミックな校風と教育を目指して、教科の枠にとらわれない“学究的世界”を生徒ともに創っています。ここには、本機構の各加盟校が実施しているPBL(Project based Learning)、C1英語、ICT教育、リベラルアーツの現代化が凝縮されています。
(写真は、同校サイトから)
たとえば、このアカデミックな活動の一環として「Visit Shizuoka」というプロジェクトを実施。中学1年生の英語と社会科(地理分野)の授業を融合し、静岡を訪れる外国人観光者に向けての広報活動を行うという企画を実施しています。
2019年に行われるラグビーW杯、2020年に行われる東京オリンピック。両大会とも多くの外国人が日本を訪れることが予想されます。そこで各大会に来る外国人を対象に静岡の魅力を伝え、静岡に足を運んでもらうことによる経済効果を見込んだ広報活動を行うのです。
生徒は自ら資料の収集、プレゼン作成、発表までの過程を取ることで静岡についての愛着と理解を深め、他者に発信するための情報収集・まとめ・表現する力を身につけようと努力しています。
すでに、静岡大学の外国人留学生などの参加者に、日本語と英語の両方でプレゼンテーションを実施。優秀者はラジオ「FM-Hi!ひるラジ!静岡情報館」で発表(2月17日12時15分〜30分放送回)するという成果もあげています。
このようなアカデミックな活動を、さらに日常の授業をはじめとする同校の教育活動全般に徹底するという気概を受けとめ、各機構の加盟校と共に、21世紀型教育をより一層広め深めていきます。子どもたちの希望と未来は、いまここに開かれているのです。