工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(3)ザ・リフレクション









静岡聖光学院は、アカデミックな校風と教育を目指して、教科の枠にとらわれない“学究的世界”を生徒ともに創っています。ここには、本機構の各加盟校が実施しているPBL(Project based Learning)、C1英語、ICT教育、リベラルアーツの現代化が凝縮されています。
(写真は、同校サイトから)
たとえば、このアカデミックな活動の一環として「Visit Shizuoka」というプロジェクトを実施。中学1年生の英語と社会科(地理分野)の授業を融合し、静岡を訪れる外国人観光者に向けての広報活動を行うという企画を実施しています。
2019年に行われるラグビーW杯、2020年に行われる東京オリンピック。両大会とも多くの外国人が日本を訪れることが予想されます。そこで各大会に来る外国人を対象に静岡の魅力を伝え、静岡に足を運んでもらうことによる経済効果を見込んだ広報活動を行うのです。
生徒は自ら資料の収集、プレゼン作成、発表までの過程を取ることで静岡についての愛着と理解を深め、他者に発信するための情報収集・まとめ・表現する力を身につけようと努力しています。
すでに、静岡大学の外国人留学生などの参加者に、日本語と英語の両方でプレゼンテーションを実施。優秀者はラジオ「FM-Hi!ひるラジ!静岡情報館」で発表(2月17日12時15分〜30分放送回)するという成果もあげています。
このようなアカデミックな活動を、さらに日常の授業をはじめとする同校の教育活動全般に徹底するという気概を受けとめ、各機構の加盟校と共に、21世紀型教育をより一層広め深めていきます。子どもたちの希望と未来は、いまここに開かれているのです。
3月14日、聖徳学園で「日本にいながら出来る国際貢献」授業の成果報告会がありました。高校2年生全員が1年間かけて、担当する国の抱えている問題を分析し、自分たちができる貢献を行っていくというグループプロジェクトです。グループに分かれて実践してきた活動成果をクラスの代表者が発表しました。 By 鈴木裕之 :海外帰国生教育研究家
国際貢献するという気持ちが大切であるのは、ユネスコ憲章前文の有名な一節「心の中に平和のとりでを築く」を引くまでもなく、相互理解を通じた平和の実現につながるからです。一方で、国際貢献するという気持ちは、情報や知識の伝達のように簡単に届けられるものではありません。いくら講義によって「現実」を伝えたとしても、それが貢献という行動を起こすことに至るのは難しいものです。
聖徳学園のグローバル教育センター長の山名先生は、「人と人との繋がり」に注目します。そこにこのグループプロジェクトの眼目があります。さらにその「繋がり」は、外に出る体験ばかりではなく、想像力によって見えない他者にも及んでいくのだと語ります。
今回のプロジェクトで生徒たちが担当した国は、パナマ、インドネシア、ルワンダ、ミクロネシア、ラオス。名前は知っていても、実際に人々がそこでどんな生活をしているのかまでは、多くの人はよく知らないのではないでしょうか。山名先生は、JICA(国際協力機構)の職員と協力しながら、クラスごとに担当の国を割り当て、そこから生徒たちの探究心が湧き起こるような設定をしました。5つの国を比較して調べるのではなく、自分の担当国が決められるというのは、自分の生まれる国を選べないことと同様、ある種の「運命」とも言える前提です。それが定められるからこそ、その国の人々に感情移入し、真剣に問題点を探ろうとするのです。
それぞれ異なる国から支配を受けてきたこれらの国々を歴史的に見てみることも一つのアプローチとして興味深いことです。しかし、貢献という視点から考えるとき、歴史に問題の所在を求めても解決にはなりません。生徒たちは、それぞれの国が抱えている問題をどうすれば少しでも解決に近づけるのか、今自分たちが日本にいながらできることを現実に実行していくことに集中していました。そういう意味ではこの1年間のプログラムは、PBLのモデルであると言ってよいでしょう。
PBLの推進機関であるBIEのジョン・ラーマー氏は、PBLに必要な要素を4つ挙げています(EDUTOPIA「PBL: What Does It Take for a Project to Be "Authentic"?」より)。
聖徳学園の国際貢献授業では、途上国の衛生に対する意識を向上するためにポスターを制作したり、途上国への関心を高めるためにブログやツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアに記事や動画を掲載したりするなど、上記の要素を満たし、なおかつ現実社会にイノベーションを起こすレベルにまでチャレンジしていることが分かります。
「模擬国連」が国の代表として政策をシミュレーションし、交渉という政治的側面に意識を向けるのに対して、「国際貢献授業」は、一市民の視点からできることを考えるという点に特徴があります。同時に、自分一人ではできないことがことがあるという限界への気づきが、仲間や関係する外部団体との連携に繋がっていくという好循環を生み出しているのです。こういう活動を通して、中には国際政治の舞台に立とうとする生徒も出てくるのでしょう。聖徳学園では、両者のバランスがうまく配分されています。
高2生5クラスの発表が終わると、オーディエンスであった高1生とのグループディスカッションが行われました。このディスカッションによって先輩の経験が後輩たちに手渡されます。もちろん後輩たちが担当する国は先輩とはまた異なる国になるのかもしれませんが、国についての情報や知識よりも、もっと大切な気持ちが引き継がれるのです。
さらにこの気持ちはⅠCTによって増幅されます。ツイッターやYoutubeは彼らにとって、ポスターを作るのと同じ感覚です。それは、世界に一斉に配信されるという意味で大きな可能性を秘めています。当然リテラシーは磨かなくてはいけません。使う言語についても、日本語で発信するのでは効果は半減以下です。現地の人に届けるメッセージであれば、英語でも効果は薄いかもしれません。ですから、生徒たちは、現地の言葉やイラストを駆使してメッセージを伝える努力をしていました。
聖徳学園では、今年東京大学への合格者を輩出しました。PBLとグローバル教育、さらに英語やICTが組み込まれる学びが、大学進学準備という側面からも評価されるようになる日も近いのではないでしょうか。
2016年度に21世紀型教育機構に加盟した正智深谷高等学校。その不退転の覚悟で臨む21世紀型教育改革の宣言が、本日3月3日の埼玉新聞に掲載。いまここという座標で未来の大航海を描くビッグイメージは、新入生に勇気と自信を内燃させるに違いない。by 本間勇人 私立学校研究家
このイメージは、同校サイトを開くとトップページにバーンと現れる。そして、校長加藤慎也先生の次のようなメッセージを読むことができる。
「昨今、社会から求められる学力が変わりつつあります。知識量よりも思考力。情報処理能力よりも情報編集能力。正解の無い問いに対する問題解決力。
世間は、わかってはいても、まだまだ知識を活用しつつも、1つの正解にたどりつく予定調和の受験知を鍛えることから抜け出ることができない。
ニーチェの「脱皮しなければ・・・」という有名な言葉も、所詮は知識レベルで、それを実行しようという勇気あるリーダーはまだ多くはない。
そんな中、加藤慎也校長と先生方は一丸となって、予測不能な地平線に漕ぎ出でる意思決定をした。その魂は、遠く人類が、ルネサンス、大航海、宗教改革に
立ち臨んだときの息吹と同期するだろう。2018年高校入試は、私学人渋沢栄一の故郷深谷で、再び疾風怒濤の嵐が吹くだろう。
正智深谷の受験知から探求智にパラダイムチェンジする動きは、高校受験生に希望の道標となるだろう。
2017年3月1日、工学院大学附属中学高等学校は、公開セミナー「世界で活躍できる13歳からの学び」を開催。東京都私学財団助成金研究報告「iPadマイクロスコープを活用した生物実験による学習コミュニティの創出」の中間報告。しかも、この研究が可能となる前提の21世紀型教育改革の理念や実践授業も見学できる充実した内容だった。
ワークショップがあるため、参加者の人数が40名限定ということもあり、意識の高い参加者が集った。すなわち、自分たちも教育改革をやりたい、PBLのようなアクティブラーニングを実践したいから学びに来たという高感度で高い意識を抱いて、参加者は、大坂や静岡など遠方からもやってきていた。by 本間勇人 私立学校研究家
平方校長の「本校の教育改革」からスタートした。2020年大学入試改革が進もうが遅れようが、世界が大きく動いている時代である。子どもたちの未来に備える21世紀型教育を学校全体で取り組む覚悟で実践してきた4年間のロードマップを語った。そして、その改革のコアが、授業改革であり、改革を進めるに当たり世界標準のモノサシである「思考コード」を議論して創り、現在検証中であることを披露した。
シラバスは、「授業×テスト×評価」がセットになっていて、それが「思考コード」というモノサシに基づいて、デザインされている。この話に参加者は驚いていたが、セミナー終了時に、セミナーという活動全体のデザインそのものが、一貫して「思考コード」に基づいていたことに気づいて、感動した参加者もいた。
高橋一也教頭の講演「世界で活躍できる13歳からの学び」は、教科書、クラス、学校の枠をはみ出す新しい教育を語った。偏差値やブランド大学に縛られるのではなく、世界を見よう、そしてそのステージで何ができ、どのように貢献できるのか、そのための新しい学習スタイル、学習空間、多様なプログラムなどが必要であると。
実際に、中学棟で高橋先生は授業を実施したが、それを見学しに行った参加者は、たしかに掲示板や全面ホワイトボードの廊下の創意工夫が、なるほど学習空間とはこういうものかと感銘をうけていた。「授業外での学び」の重要性に心揺さぶられ、魅了され、しかし、自分の学校でやろうとしたとき、どうすべきなのか刺激をうけていた先生もいた。
しかし、何より、授業がすごかった。ある先生は、渋谷のスクランブル交差点でゲリラ豪雨が降ってきたときの混乱状況を、即興劇でしかも英語で演じることができるのだけでも驚いたが、そのとき、そこに居合わせた人々の性格特徴をつかまえながら感情を音声、表情、しぐさに表現していく授業の柔らかさに感動したと。
一見アドリブで行われているようだし、ロールプレイに到るまでの時間も短い。しかし、これは、もしここが世界というステージだったらとトランスフォームした時、周りの動きは自分を待ってくれない。まさに小さな世界のステージだったのだと思い知ったとき、「授業外の学び」の本当の意味が分かったような気がすると私にそっと語ってくれた。
有山先生の「デザイン思考」の授業も、SNSやタブレットを活用した授業がこんなにも有効であるのかと実感できたと語る先生もいた。しかし、実はこのデザイン思考は、授業前の仕込みがすごい。もし参加者が、バックヤードの話を聞いたら、21世紀型教育というのは、まさに舞台芸術さながらであることに気づいただろう。
福田先生の国語の授業は、小説の名言の自由なそれでいて哲学的な解釈の授業。画像と文章の中の言葉を結合することは一見自由だが、ただ自由では、カテゴリーミステイクを生み出してしまうので、そこをどのようにクリティカルシンキングで乗り越えるか、なかなかスリリングなプレゼンになる。
論理的な展開をたどっていくだけではなく、このカテゴリーミステイクを解決するという集合論的論理を考える学びは、実は創造性の翼を広げる跳躍台にいきつくことになる。
工学院の中学入試では、思考力入試を実施している。その対策講座として、説明会で「思考力セミナー」を行っているが、この体験ワークショップがファイナルアクティビティとなった。入試問題は学校の顔(アドミッションポリシー)であるから、この体験を通して、工学院の21世紀型教育改革のエッセンスを実感してもらう意図があったのだろう。
プログラムのテーマは「簡易顕微鏡NURUGOを使ったマイクロフォトグラファーになろう」。iPadにNURUGOを装着して、まずは写真を撮っていく。なかなかうまくいかない、どうしたらよいのか?そこでスタンフォード流儀のデザイン思考の創造力を刺激するインプロを挿入するなど、随所にリフレクションのループが仕掛けられている。
6つのステップをクリアしていく授業になっているが、各ステップでは、こまめにリフレクションされていて、全体を通してリニアではなく、ループ型のフローチャートになっている。ここにクリエイティビティが刺激される秘密がある。しかも、ワークショップ終了後にスーパーバイザーを務めた教務主任の太田先生によって、このステップがすべて「思考コード」に紐づいていることが明かされた。
今回公開された授業もすべて「思考コード」でシラバスが作成され公開されていた。ここにきて、参加者は、ようやく今回のセミナーがハウツーセミナーではなく、完全にビジョン型セミナーであることに気づいた。平方校長、高橋教頭の世界の変化という未来からバックキャスティングして、いまここで子どもたちが未来を手中にするための具体的な教育デザインがなされているのだ。「思考コード」という工学院軸が一気通貫している。ビジョンをシェアし、システマティックにそれでいて共感的なコミュニケーションがある学校。
アクティビティ進行中の合間に、すれ違う瞬間的な時間で対話がなされる学校。刹那の時間に、高校の改革のアイデアがブレストされるシーンもあった。
実に密なるコミュニティ、あるいは共同体的な絆が随所に感じられるシーンがいっぱいあった。
しかしながら、ただの仲良し集団ではない。今回のプログラムの一部始終を記録に残し、サイトや動画をつくって、発信しつつ、リフレクションができるように仕掛けるスーパーモニターである加藤先生の存在が大きい。学習する組織が進化するには、モニタリングシステムが極めて重要だ。このカリキュラムマネジメントシステムは、今回披露されなかった。もちろん、今のところ企業秘密なのだろう。
平方校長自身、生物の教師であり、美術の教師であり、技術の教師であり、彫刻家として群馬の名だたるアーティストである。そしてなんといっても、一般財団法人東京私立中学高等学校協会副会長、21世紀型教育機構副理事長として、日本の教育行政を動かす聡明な発言力・影響力を発揮している。
工学院が、ハウツー近視眼型改革ではなく、ビジョン実現型改革ができる「学習する組織」を形成できるのは、ミクロもマクロも統合できる聡明な校長のリーダーシップが極まりなくポイントであることが証明されたセミナーであった。