PBL

聖学院 PILとICT (3)

伊藤豊先生の国語の授業 ルービックとPIL
 
伊藤先生の高2の授業は、「家族化するペット」という評論文の読解の授業が展開されていた。
 
 

 
20世紀型の読解の授業だと、因果関係、対照的関係、抽象と具体の関係などを先生が分析するか、せいぜい教師と生徒の問答が展開されて終わるが、伊藤先生の授業はだいぶ違う。
 
まず、教科書の授業の前に3分間スピーチが行われる。生徒が自分でテーマを決めて、それについて3分間のプレゼンをする。
 
 
そして、そのプレゼンに対し、予め生徒と共有しておいたルーブリックスタイルの思考の新しい評価軸で伊藤先生が評価をして返す。スコアは付くけれど、それが目的ではなく、プレゼンの構造、インパクト、ストーリー性など次のハードルにいくためのランターンの光としての機能の方が大切だ。
 
 
考えるとは、表現するとは、パフォーマンスするとは、また、どの高さのハードルを飛び越えているのか、次はどこを飛ばなければならないのか、伊藤先生と生徒は対話ができるようになっている。もちろん、対面の時もあるが、生徒が自問自答の中でロールプレイするヴァーチャルリアリティの場合もある。
 
ここで極めて重要なのは、PILの協働者が、生徒どうしだけではなく、生徒と著者という関係を持ち込んでいるということなのである。
 
 
3分間スピーチとルーブリックの体験を通して、文章の構造を自ら組み立てる意識が明快になっているから、生徒はその構造と作者の文章の構造を比較検討しながら理解できるのである。
 
あるいは比較できるから読解ができると言った方が良いかもしれない。すると、生徒と作者の文章の構造は同じであるかどうか、あるいは柔軟に自分の構造を組み替え、作者の構造に適用できるかどうかがカギになる。
 
それでは、この構造のマッチングはいかにして可能なのか?
 
1) ルーブリックで、文章の「構造」を認識するようになっている。
2) 作者の引用しているマテリアルを自分はどう読み解くか、そのストーリーをまず考える。
3) チームになって、パーソナルな考えや感じたことを情報交換する。
4) その上で、作者の文章を分析する。
5) 友人同士、作者と自分などの構造のズレを認識する。
 
このような過程が授業の中に埋め込まれているのである。
 
伊藤先生は、電子黒板を活用しているが、これによって板書の時間を節約できる。その分でピアインストラクションの時間を生み出すことができる。
 
 
しかし、何より重要なのは、これは英語の高橋先生と同じであるが、データベースの役割を果たしているということである。
 
クラスのメンバーの過去の考え方や先輩たちの考え方をたどることができる。「最近接発達領域」が、時空も超えて広がるのである。ただし、「最近接発達領域」の理解は、つねに領域を越境される体験であることが最も重要である。
 
この越境が、理解を適用にシフトし、適用をメタ認知に昇華させる。このとき、テキストの背景の時代の構造に到達する。あらゆるマテリアルは、時代時代の共通構造を有している。そして歴史を画すとか、パラダイムが転換するとかいう話は、その時代の構造そのものが変容するときのことを示唆する。
 
 
高2の生徒の中には、このテキストはまだ構造主義的パラダイムで、あるいは存在論的構造で、ポスト構造主義のパラダイムにシフトしていないことを語ってくれた。
 
もっとも、その時代の流れがなぜおこるか、またそれは止める必要があるのかないのかなどの議論は、これからだという。
 
 
 

 

 

聖学院 PILとICT (2)

高橋先生の中3の英語の授業 電子黒板の有効活用で、静態的知識から動態的知識へ
 
取材に訪れたとき、高橋一也先生(聖学院英語の21世紀国際教育部部長)は、教科書のレッスン終了後の確認の授業を展開していた。
 

テーマは、不定詞の機能。文法事項が中心。といってしまえば、21世紀型教育における英語の授業は文法をやらないのではないかという疑問を投げられがちだが、それは違う。
 
文法とはルールである。それぞれの国の言語を理解するのに、はじめは、それぞれの言葉のマテリアル情報を収集して、それを分析して、一般化してルールを見つけるのと同じ作業は必要だ。
 
つまり言語の「構造」を見出す手法を高橋先生は、電子黒板を活用して生徒とやりとりしていく。
 
 
文法を言語の「構造」や「機能」としてとらえ返すあるいは拡大しているのが、高橋先生の英語の講義である。
 
それでは、どこがPILか?PILとはIBでもチャータースクールでも、シラバスを考える時に仕掛けられときにヴィゴツキーの「発達の最近接領域」の発見と、その領域でのピアインストラクションである。
 
20世紀型は、教師が生徒に情報を伝えたり、問答形式で授業を行う。教室の生徒全員が同じ能力を持っていれば、それは効果的であるが、ほとんどの場合、能力にはバラツキがある。
 
また、今後大きなうねりとなる、海外の子どもたちが教室に参加してきたとき、異文化の文脈が挿入されるから、能力そのものの概念にも影響を与える。
 
そうなってくると、もはや教師が与える問いは、子どもによってはあまりに高いハードルになる。いわゆる落ちこぼれが生まれる機会をわざわざつくることになるのである。実際20世紀型教育はそうしてきたのである。
 
 
そこで、21世紀は、潜在的能力として体験値がほぼ同じ子ども同士で対話させる機会を講義の中に挿入した。いっしょに飛び越えられるちょうど良いハードルを設定し、飛び越えられたら、次のハードルを設定しなおして、再びチャンレジするというサイクルが生まれた。
 
ヴィゴツキー自身は、残念ながら若くして他界したから、教師と生徒の間にそのサイクルが生まれる「最近接発達領域」を見出したところで終わっているが、その後、その流れは今に受け継がれ、生徒どうしの間でこそ「最近接発達領域」は見いだせるという理論と実践が広まった。
 
(Strategic Reading から)
 
聖学院は、もともと生徒1人ひとりの能力をどうやったら社会に結びつけられるかというIBのDPのCASと同じボランティアベースの教育を行っていたから、それを可視化するのはそう難しくなかった。多くのPBLの機会で、それを発見し、中学部部長の大野泰邦先生と高校部部長の伊藤豊先生が、昨年夏の教員研修会で、PBLや最近接発達領域をメタ認知段階でシェアした。
 
そこから一気呵成に、PIL、PBL、電子黒板の活用が浸透した。
 
 
 
 

聖学院 PILとICT (1)

聖学院といえば、今やプロジェクト学習(PBL)の拠点。PBLは、SGH(スーパーグローバルハイスクール)やIB(国際バカロレア)、米国のチャータースクールなどで活用されているアクティブラーニング。大学でも今やっと広まりつつある。by本間勇人:私立学校研究家

(2014年6月8日、男子校フェアで聖学院は「思考力セミナー」を披露)

ふだんの授業、記念祭(体育祭)、農村体験、タイ研修、沖縄平和学習などでプロジェクトマネジメントを行う学びの方法論として活用されている。
 
そのプロトタイプが、中学入試の学校説明会のときに併設される「思考力セミナー」という講座で披露されている。いつも申込者が殺到し、定員はあっという間に満席になる。これは、同校の入試の一類型である「思考力テスト」の対策講座。
 
 
塾などでトレーニング講座がないので、同校が独自に開設している。公立中高一貫校の適性検査のように、記述や作文、応用問題のパッチワーク・タイプではなく、思考の過程そのものを学べる潜在的能力を測る21世紀型テストだからである。
 
 
しかし、PBLだけが重視され、知識の背景文脈を学ぶ講義形式の授業が行われていないわけでは当然ない。PIL(ピアインストラクチャーレクチャー)という21世紀型講義形式の授業も行われているのだ。

 

第2回 21会カンファレンス 開催 (5)

チーム内での対話が終わると、各チーム2名を選出して3分間の発表を行った。発表は全部で3回。発表者は持ち回りで、発表者以外は気になるチームのポスターセッションを見て回る。3回のセッションの後、最も印象に残ったチームが代表として最終プレゼンを行った。

ポスターセッションは8チームが同時に実施する。ギャラリーは、ポスターの内容や発表のトーンから、ここぞと思うチームの前で立ち止まり、しばし発表に耳を傾ける。

どのチームも終始和やかな雰囲気。しかしポスターを見るとチームごとに違いがあって興味深い。

ポスターのまとめ方ばかりではない。プレゼンの仕方もチームそれぞれの特色がある。

プレゼン内容に優劣をつけることは困難であるが、各チームのポスターセッションを見て回ることで、ここにも「比較」「気づき」といった構造が表れる。

印象に残ったチームが一つ選出され、代表チームとして最終プレゼンを行った。1~4までの問いに対してバランスよく回答し、プレゼンも二人の先生が役割分担して行っているところが特徴的であった。

8つのチームで唯一、学校の教員以外で構成されたビジネスチームも最終プレゼンを行った。ビジネスチームだけあって、外部変化に対する眼差しや、比較分析を重視しているところが特徴的であった。

チームでの対話を通して、あるいはポスターセッションでのリサーチを通して、ワークショップの参加者は様々な気づきがあったようである。21世紀型教育を実践する際のジレンマに対して、リフレクティブに振り返る人もいれば、乗り越えるべき課題をクリティカルに考える人もいる。ここでの問いをきっかけにして、次のアクションや対話の科学反応が起きるかどうかがこのワークショップの真価が問われるところだろう。

共立女子中学高等学校の渡辺眞人校長先生は、リベラルアーツという、私学の教育の原点とも言える精神に言及し、未来へのビジョンを持つことの重要性について語った。

21会の使命は21世紀型教育の定義をして終わりというわけではない。渡辺校長先生の言葉は、21会が21世紀型教育を「創りだす」組織体なのだということをはっきりと思い起こさせるものだった。

カンファレンスの最後を締めくくるにあたり、菅原先生は、この日の対話を各学校に持ち帰って、議論を広げていただきたいとメッセージを届けた。

終了時間は30分以上オーバーしていたが、高揚した気分が会場全体を包んでいた。

各チームに分かれていた同じ学校の先生が連れだって、この会場を後にしていた。対話の続きはそれぞれの学校で実践されていくことであろう。

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第2回 21会カンファレンス 開催 (4)

第二部では、『21会café』という題目で、ワークショップが開かれた。このワークショップは、6~7人が一つのチームを編成してチーム内での対話を行い、最後にポスターセッションで発表するというもの。チームごとの対話は本橋先生のファシリテートによって開始された。

各チームに提示された問いは次の4つである。
  1. 20世紀型教育の特徴とは?
  2. 21世紀型教育の特徴とは?
  3. 現状打破すべき問題とは?
  4. 問題を解決するためのアクションで何があるか?

ディスカッションタイムは25分間。すぐに対話内容をポスターに書き込むチームもあれば、ポスターには何も書き込まずに意見を出し合うチームもある。

学校での経験や、子供だった頃の記憶をシェアしながら、対話しポイントをまとめていく。

21会校の先生による7つのチームと、協力企業などのメンバーによる1つのチーム、合計8つのチームがポスターセッションに向けて対話を進めた。

対話を促した最初の4つの問いには構造がある。まさにPBL型のワークショップであったのだ。

 

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第2回 21会カンファレンス 開催 (3)

第1部「情報共有」の締めには、工学院大学附属中学校・高等学校の平方先生、続いて三田国際学園の大橋清貫学園長がプレゼンを行った。平方先生は、これからの社会でなぜ21世紀型教育が必要となるのか、大橋先生は、保護者に選んでもらう学校作りについて、それぞれ語った。

「21会の新しい取り組みの考え方」 平方邦行(工学院大学附属中学校・高等学校校長)

現在、私立学校は厳しい状況下にあり、2020年から2030年までの間に、生徒数及び私立学校数は大幅に減るだろうと予測される。その中で私立学校が生き残っていくためにはどうすればいいのか。そもそも数年前まで、「グローバル教育」という言葉は使われていなかった。2018年から大学入試制度が変わるという点も含めて、今日本の教育は大きく変わろうとしていると言えるだろう。今までの学びの構造は「試験が第一の優先順位」であった。この現状を打破するために必要なのは、「授業を変える」ことである。それが21会がやろうとしていることの一つである。例えば、PBL(Project Based Learning)型の学び。試験ではなくプロジェクトをこなしていくことで、知識を増やすのと同時に思考方法も学ぶというものだ。
 
PBL型学びを促進するような授業を教員方が行えるように重要なのは、教員方が自らPBL型学びを体験することだ。実際に工学院大学附属中高では、PBLワークショップという教員向けのワークショップを試みており、そこでは、教員が生徒として、大学入試問題をプロジェクトと捉え、仲間同士で考え、話し合いながらそれを解いているという。

ゆとり時代からグローバル時代になり、次に来るのはサバイバル時代である。これを生き残るために、ワークショップ等を通じて授業を変革し、それによって人材を育てていかなければならない。平方先生の主張はロジカルで明快だ。

「新しい学校づくり 世界を変える画期的教育」  大橋清貫(三田国際学園 学園長)

今、「英語教育」「グローバル教育」「思考力教育」を謳わない学校はないだろう。では、それぞれの差はどこにでるのか。それは、それぞれの学校の「本気度」「本物度」「結果」である。

では、本気の・本物の・結果が伴うような英語/クローバル/思考力教育を行うためには何か必要なのか。大橋先生はここで自ら実践してきた秘密を開陳した。入学してくるすべての保護者との面談を通して理解したこと。それは保護者こそが21世紀社会の最前線で、社会の変化をひしひしと感じているという事実である。したがって保護者がしてほしいと思っている教育に耳を傾け、それを実践するならばその学校は生まれ変わるのだ。

21世紀型教育の実践のために、大橋先生が着手したことは教員向けの研修である。研修を行うことによって、意欲を持ってもらうことができる。つまり、本気の教育につながる。研修によって教員の授業もより本物に近づいていくだろう。そして、研修において実際に思考力を駆使して課題をこなすようなことが求められるのなら、それは教員の思考力の教育に、そしてひいては生徒たちへの教育にもつながるだろう。

奇しくも、平方先生と大橋先生の話は教職員研修の重要性という点において合致した。21世紀型教育を実践するためのビジョンやスキームが語られたのだ。
 
こうして第1部では、21世紀型教育の理念やミッション、ビジョンやスキーム、そして具体的実践という、それぞれのレイヤーでの情報共有がなされた。
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第2回 21会カンファレンス 開催 (2)

第一部の『情報共有』では、4校がそれぞれの取り組みについてプレゼンテーションを行った。SGHに関するプロジェクトや、21世紀型教育を象徴するような新しいイベントの提案等、これからの学校及び教育の場がどう変化していくのか、希望の膨らむプレゼンテーションが続いた。

「順天のSGHの取り組み」  長塚篤夫 (順天中学校・高等学校校長)

順天中学・高等学校の長塚校長先生は、「順天のSGHの取り組み」について語った。この時に配布した資料には、「SGH」がどのようなものであるか、文部科学省がその目的と事業概要をどのように捉えているか、といったことについて抜粋されており、スーパーグローバルハイスクールが何を目指そうとしているものであるのか、丁寧に分析をしていたことが伺える。

順天では1964年から既に、代表生徒を海外体験へと送り出す「海外派遣制度」を取り入れ、それ以降35年間で計126名を海外へ送り出してきた。また、帰国生の受け入れも積極的に行っており、「STAR(帰国生の会)」という学習サポートの場も設けている。SGHの指定を受ける前から充実したグローバル教育を実践してきたのだ。

今回のSGHの指定を受けるにあたって、これまで積み重ねてきたこととどのような違いを打ち出すべきなのか、そのような思いが先ほど触れた丁寧な分析にも表れているのであろう。

順天では、SGHの指定を受けたからには、これまで以上にグローバルな教育環境を整えて邁進していくという決意が語られた。

「佼成学園女子のSGHの取り組み」 江川昭夫 (佼成学園女子中学高等学校教頭)

江川教頭先生は、佼成学園女子がSGHの指定を受けるまでどのような経緯をたどってきたかを英語教育という側面から語った。

2000年にイマージョン・プログラムを中学校で開始。更に2004年には、高等学校に「特進留学コース」を創設し、全校で「英検まつり」を年に二度開いた。マスコミに「英語の佼成」として何度も登場した。これらの取り組みやSGHの申請内容が認められ、「スーパーグローバルハイスクール」の指定を受けたのだという。

また、今後の方向性については、「英語の佼成」から「グローバルの佼成」へというキャッチフレーズで端的に示した。

もともと佼成学園が持っているリソースを活かすためには全職員が意識を高めていくこと大事である。そして、今回SGHに指定されたことで、どうやら教職員の間にそのような機運が高まってきたという。「異文化を理解する能力」と「異文化とコミュニケーションし、影響力を及ぼす能力」を身に付け、周囲を下支えする自立した女性を育成していくとのことだ。これらの能力は、21会が考える21世紀型の教育の目標でもあるだろう。SGHの指定を受けることで、学校全体の教職員の意識が変わる、更に積極的にこれらの目標へ向かっていけることが可能となったのだ。

「富士見丘の新しい取り組み提案」 大島規男 (富士見丘中学校高等学校教頭)

大島教頭先生は、富士見丘がSGHアソシエイトに選ばれたということから、「連携」というキーワードで今後の取り組みについて語った。

大島教頭先生によると、「連携」とは、“ある者と他の者が一緒に取り組み、お互いがもともと持っていなかったものをつくりだす、気づいていなかったことに気づく”という点に意味があるのだという。そこで、21会でもそのような「連携」を実現しようと、『ワールドカフェ』という企画を提案した。『ワールドカフェ』、あるいは『ロールモデルカフェ』ともいうが、これは、留学経験を持つ社会人を招き、生徒たちを対象に座談会を開こうという企画である。このような企画が実現できれば、生徒たちの視野を広げ、未来に希望を感じさせ、そしてグローバル教育の重要さを体感してもらうことが可能になるだろう。

また、秋田国際教養大学へ2泊の合宿へ行ったときに、生徒たちは「今後30年のライフプランをたてる」という課題を与えられたと言う。この合宿の後、生徒から「ある一つのことを究明したと思うと、新しく疑問がうまれる。そこからまた新しい究明がうまれる」という感想が出たそうだ。これを聞いて、大島教頭先生は、「合宿の効果があった」と実感したらしい。『ワールドカフェ』という新しい取り組みの提案も、このような感想をうんでくれると思うと、実現が大変待ち遠しい。

「文化学園大学杉並の新機軸」  窪田敦 (文化学園大杉並中学・高等学校英語科主任)

文大杉並では、「Double Diploma Course」という新しいコースの準備をしている。「Double Diploma Course」とは、文大杉並のカリキュラムと、海外高校(予定しているのはカナダ)のカリキュラムを融合し、日本とカナダ両国の高校卒業資格が同時に取得可能なプログラムだ。海外カリキュラムの授業はすべて英語で行われるようになる。この際、「Creativity」、「Critical Thinking」、そして「Logical Thinking」等の21世紀型スキルを育てるような授業が展開されることになる。この「Double Diploma Course」を実現するために、文大杉並は現在二つの取り組みを行っている。

一つは、2014年の4月から開始した、中学グローバルコースだ。このコースにおいては、週に4時間ネイティブ教師の英語授業が受けられ、iPadを生徒全員に配布しICTの活用を積極的に行う。もう一つは、2015年4月から高校英語コースをリニューアルさせることだ。電子黒板を用いてインタラクティブな授業に取り組んでいくなかで、一方的な講義スタイルを見直していく予定である。

第2回 21会カンファレンス 開催 (1)

5月30日(金)富士見丘学園に21会メンバー校の先生方が結集した。都心のビル群が一望できるラウンジで、21会会長で富士見丘学園理事長校長の吉田先生が、静かに、しかし力強い決意とともに、21会と私立学校の精神を語った。 by 松本実沙音 :21会リサーチャー(東京大学文科二類) & 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家

開会に先立ち、総合司会の菅原先生(八雲学園)と本橋先生(聖学院)は、21会内部の参加者だけでカンファレンスを行うことの意義について、「21会の考え方、目的、これからどういったことをやっていくのかということを会員校の中で共有していく機会」と位置付け、この日のカンファレンスで経験したことを各学校に持ち帰って広げてほしいというメッセージを送った。そして、会場が21世紀型教育に対する期待感に包まれた中、富士見丘学園の吉田理事長校長の開会挨拶が始まった。

「21会の真骨頂」 吉田晋会長(21会会長・富士見丘学園理事長校長)

全体挨拶において吉田先生は、特別な催しを行うときに利用するペントハウスラウンジに21会校のメンバーをお招きすることができて大変嬉しいと率直な気持ちを真っ先に表現した。21会校メンバー校を身内として歓迎したのだ。そして身内だからこそ話せる本音で語ってほしいという思いも同時に表明した。

中教審の委員でもある吉田先生は、これまで公立の学校に様々な提言をしてきた経験から、21世紀型の教育はやはり私立学校でしかなしえないことであると痛感している。どれほど制度改革が行われても、理念や継続性のないものは、結局最後にダメになってしまう。そうした思いから、私立学校、そして21会という有志が強く連帯していくことへの期待を表明したのである。

自分だけ、自校だけという精神は、学校の本来的な姿ではない。21世紀の社会を考えれば、私たち自身が持つべき価値観が教育内容として問われてしまうのだというメッセージである。私立学校が6年一貫教育やグローバル教育などにおいて公立のモデルとなってきたことを誇りとしつつ、これからは私立学校全体がより高め合っていく関係を構築していくことの必要性を訴えた。

21世紀型教育を推進する自分たちがまずは開かれた価値観で連帯していこうとするところは、まさに吉田先生が21世紀私学人たる所以である。

この場に集うメンバー校の想いを確認するところから、第2回21会カンファレンスは開始された。

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工学院 PIL×PBLを全面展開へ(3)

PIL×PBLの授業のプロトタイプづくり始まる

カリキュラムイノベーションチームは、議論をしているだけではない。同時に自らの授業でPILとPBLの授業のモデルやプロトタイプづくりも行っていく。生徒の学力をさらに伸ばすために、当然その結果として、大学進学実績が伸びるようにという信念は当然固い。

国語科主任の斎藤先生は、高2の「古典常識」という授業で、PIL×PBL授業に挑戦した。古典常識の知識を記憶するだけではなく、そこから日本の文化や生活の何が見えるのか、異文化とのつながりがどう見えるのか、生徒の世界を読み解く眼を養う授業となった。本来の古典の勉強と同時に、大学入試における古典の問題で得点も取れるような一挙両得の授業デザインとなった。

プロトタイプづくりには、3時間の授業を活用した。齊藤先生とパートナーが授業に参加し、授業終了後、プロトタイプのデザインついて議論し、改善していくというプロセス。1時間目は、まずはいつもの授業スタイル。そこにPBLにシフトするタイミングがあるかどうか確認するところから始めた。

1時間目は、いつもの授業であったが、すべてIDO/YOUHELP(Iは教師、YOUは生徒)の問答で構成されていた。生徒は資料を調べながら、ワークシートに答えを書き込んでいく。そのとき、齊藤先生は、資料のどこに書いてあるかを問うのではない。午前や正午の中に生き続けている江戸の時間を表示する漢字はあるか、そのことは何を意味するのか問いかけていく。

そして、生徒の側から、文化も生活も違っているのに、なぜ今の文化に昔の暦や行事のなごりがあるのか質問がでる。そのとき、齊藤先生は、その質問については2時間目以降考えていこうと提案して授業を終えた。

授業終了後、齊藤先生も見学していたパートナーも、手ごたえを感じた。今回はYOUが単数だったけれど、あれがYOUたちという複数に問いかけられれば、ピアインストラクションやプロジェクト型の授業(PIL×PBL)に即シフトできる。しかも、生徒自身が問題を発見しているのだから、興味・関心・好奇心がわいているところからスタートできるタイミングであると導かれていった。

2時間目も最初の時間は、生徒が自分で調べてワークシートに書き込んでいく作業を行いながら、ますます今と昔の違いに興味をもち始めたところで、では、使う時期などは違うけれど、暦が存在していることは共通なのだから、まずはその暦の共通点から語り合うことにした。2時間目終了後、齊藤先生は、生徒のワークシートから情報を収集して、テータを整理した。

そして3時間目を迎えた。いよいよ考えを深める問題から出発。ただし、自由に話し合いなさないではなく、理由をまず考え、それからその理由の理由を考えるというように、ハードルを二段階にわけた。また、全員が考える機会を確保するために、まずは各人の考えをポストイットに書き込み、それをシートにはりつけてから、チームの意見をつくるために議論をしていった。

さらに、それらの議論を通して、今後日本とグローバルな社会について考える時に、大切な対概念について議論し、プレゼンすることになった。

授業終了後の齊藤先生とパートナーとの振り返りの対話では、生徒たちが古典常識の言葉の背景を議論していく過程で、根本的にぶつかり合う、「普遍と特殊」「社会と個人」などの人間や社会の本質的な問題に到達したことを確認。そして、ここまできたときに、はじめて教科横断的なカリキュラムが組めるというヒントも得た。

プロトタイプを構成する要素としては、シークエンス、テキストや問いなどのリソース、学びの道具、そしてなんといても、生徒がどんな知識をどこまで掘り下げることができたのか評価できる思考コードをいかに組み合わせるか、1つのモデルを提示できるのではないかというところまで、一気呵成に上昇気流に乗った。

 

工学院 PIL×PBLを全面展開へ(2)

カリキュラムイノベーションチームはPBL型開発

知的なプログラムの開発をするときには、まずはビジョンを共有する。ただし、その段階でのビジョンは、ある程度の共有はするが、未規定性のままの仮説。試行錯誤の開発が進むにつれて細かいところは変わっていける柔軟な「アソビ」は残すということのようである。

工学院が目指す21世紀型教育のビッグピクチャーは絵としては出来上がっている。しかし、≪GIL≫(グローバル、イノベーション、リベラルアーツ)の一般的な意味は、すでに20世紀末にも語られているが、2007年以降、あるいは3・11以降、それらの概念は、再び意味が変わってきていると言われている。まずはその確認からディスカッションは始まった。

メンバー1人ひとりの言葉は、当然違うが、ある程度方向性は共通していた。

自分のローカルな知識も認め、世界の知識もまざりあえるようになる。

well-rounded education

双方向型・共同作業型によって、生徒が自分で課題を見つけ解決していける教育改革

従来の大学入試のみに求められる教科ではなく、教科間の枠組みを超えた学びの提供

などなど活発に議論がなされ、その都度プレゼンしながら、共有の作業が続いた。

同様に、≪GIL≫を実現する21世紀型スキル(問題解決能力、チームワーク力、批判的思考力、コミュニケーション能力、情報リテラシー)についても、ディスカッションそしてプレゼンテーション。

こうして校訓そしてビジョンを共有するディスカッションをしたときに、それがディスカッションとして成立していると評価するのはいかにして可能か?スタイルとしてディスカッションしているだけだったのか、あるゴールに向かってディスカッションはできたのか。コマ目に「振り返り」をいれる「メタディスカッション」も挿入されていた。そんな折、成長や発達のキーワード「アウフヘーベン」という言葉が発せられた。

カリキュラムイノベーションチームの多くは、昨年国際バカロレア(IB)のワークショップ型研修に参加してきている。そこで、教師中心主義でもなく生徒中心主義でもなく「学習者中心主義」であるという理念は工学院の構えに共通していると感じて帰ってきた。

つまり、生徒のみなならず、教師も共に学びながら、互いに成長していく学びの環境こそ21世紀型スキルが実現する学びで、≪GIL≫を形作る大きな構成要素であると。「アウフヘーベン」という用語は、そのような発想のIBの基本的な哲学の根っこにある考え方である。日本の教育では、今ではすっかり使用されなくなった言葉だが、その概念は、発達心理学や認知心理学の中で生きている。そんな話も出た。

そして、結局「アウフヘーベン」の概念にしても、発達心理学や認知心理学における発達の概念にしても、大事なことはどの段階に成長したり発達したりしているのかをとらえる「クライテリア(基準)」が、明快でない限り、どこでどんな質問を投げかけたり、生徒どうし教え合ったり(PIL)、ディスカッション(PBL)したりするチャンスをつくるか判然としないではないかということになった。

一方通行的に知識を教えている講義型授業では、生徒が「知識」をどこまで記憶したのか、それを測っていればよかったのだが、「知識」をどのように組み合わせ/組み替えるのかまで考慮に入れると、その段階を予め想定しながら、教師と生徒がどの段階まで発達したのか拠って立つ指標や基準、つまり評価コードが新たに必要になってくる。

それを「思考コード」(現状では未知のままのX codeである)という名で、工学院独自のそれでいてグローバルスタンダードに通じる、ハイブリッドなグローバル教育を開発するのがカリキュラムイノベーション開発メンバーの使命であるという地平が広がったのである。

 

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