PBL

文大杉並 「感動」を支える PBL型の学び(1)

文化学園大学杉並中高(以降「文大杉並」、または「文杉」)の建学の精神は「感動の教育」である。生徒の心に感動があるからこそ、思いやりや尊敬も育まれ、生きることの意味も感得されるという。そのような感動を生み出す文大杉並の教育の根底には、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)型の学びが浸透している。松谷校長、青井教頭、英語科の窪田先生にお話を伺った。(by 鈴木裕之:海外帰国生教育研究家)

 

感動の教育

 松谷校長は、長らく文大杉並テニス部の顧問を務め、経験も実力もほとんどゼロに等しかったテニス部を全国一のレベルに導いた立役者である。そこで経験したであろう苦労や感動の数々はとてもここに書ききれるものではないが、あえてその凄さの手がかりを松谷校長自身の言葉に求めるならば、「同じ高校生を相手にするのだから、能力が大きく違うわけではない。最後は精神力の差になる。そして、その精神力は日々の練習によってのみ鍛錬される」と喝破する点にある。
 当然であるが、厳しい練習に生徒がついてくるためには、指導する側に、それだけの魅力や引きつける力がなければならない。生徒に日々感動を与える力を教師自身が有していないと、生徒は途中で挫折してしまうかもしれない。校長はかつての経験を次のように振り返る。
これまで何度も壁にぶつかってきたし、逆に生徒に教わったこともある。決勝戦で敗れてしまった翌朝、テニスコートの近くの宿舎で寝ていると、ボールの音がポンポンとする。昨日敗戦でうなだれていたはずの生徒が、来年こそ勝ちましょうと言ってきて励まされたこともあった。諦めない気持ちを教わり、実際にその翌年に優勝することができたのです。
 松谷校長は、スポーツでも勉強でも面白さを伝えることが結局は強くなることにつながるのだ、と語る。そして、いよいよ校長として、授業にもリーダーシップを発揮し始めたと周囲の先生は期待をもって話してくれた。それは、生徒の「学ぼうとする力」に働きかけることである。

 

「学ぼうとする力=興味と関心」を引き出すPBL型の授業

 文大杉並では、学びを「学ぼうとする力」「学ぶ力」「学んだ力」という三つの側面から捉えている。そして「学ぼうとする力」を伸ばすために、授業の最初の5分間に必ず生徒の好奇心を引き出す工夫をするように徹底されているのだそうだ。一見シンプルな工夫であるように思うが、校長がリーダーシップを取ってこれを実施していることの意味は大きい。というのも、授業をする先生にクリティカルな視点が埋め込まれ、そして、それが個人技ではなく、システムとして機能するようになったことを意味しているからである。

 授業という場は、ともすると誰も口を挟めない聖域になりがちである。凄い授業を行う先生がいても、それがなかなか他に波及しないことがある。システムになるかどうかはひとえにリーダーにかかっていると言ってよい。その点、かつてテニス部を全国レベルに導いた松谷校長の手腕は折り紙つきだ。信頼をベースに進めるリーダーシップの手法は、確実に文大杉並の先生方に浸透しつつある。

 松谷校長の考えが浸透しているとすぐに分かったのは、実際に校舎内の授業を見学させていただいた時である。ある中学校1年生の国語の授業では、自分が調べた漢字の意味を黒板に書き、皆の前で発表していた。また地理の授業では、生徒の興味を引き出すためのビデオを流していた。英語の授業でも、映画の1シーンを流して、そのセリフに使われているワンフレーズから英文法を学ぶなどといった工夫が行われるという。生徒の「学ぼうとする力」を引き出そうとすれば授業は自ずとPBL型になっていくわけである。

第1回21会カンファレンス 閉会メッセージ

閉会のメッセージは、総合司会平方邦行先生(工学院大学附属中学校・高等学校校長)から。平方先生は、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の副会長でもある。政財界の人脈も広く、教育のみならず政治や経済にも20世紀型発想から21世紀型発想にパラダイムをシフトするように啓蒙活動をしている。

特に文科省に対しては、誠の道を説いている。ひとり工学院のためのみならず、私立学校そして日本の教育のために日本全国そして世界を奔走している。それができるのは工学院の先生方が日々校長を支えているからでもある。それから、生徒たちもそうだ。この間うかがった折、廊下ですれ違った中学生たちが、平方校長は教育のプロだよ、この間の話は感動したと話していたのを思い出した。日々の信頼が、社会の信頼を形成する。

今回のカンファレンスの会場も、富士見丘学園をお借りした。当たり前のように富士見丘学園の多くの先生方が前日から会場設営に汗を流し、当日は参加者をもてなしてくださった。そして会場の撤収作業もおこなってくださった。子どもたちの未来を思う教育者のこのボランティア貢献精神に支えられていることを私たちは絶対に忘れてはいけない。これは、政財官学の人々には、わからない奥行きの深い人間の条件なのである。労働と仕事と活動はそれぞれ違い、豊かに広がっている。

しかし、一般に働くことは労働という意味でしか日本人はとらえられなくなっている。アルザスのシャープのフランス人前社長が、働く意味の文化的な差異を互いに理解し、深めていくリベラルアーツの素養がないと、グローバル企業は成功しないよと語っていたのを思い出す。私立学校の先生は、このリベラルアーツを身に染み込ませているのである。man for othersを体現している先生方に心から感謝申し上げたい。(by 本間勇人:私立学校研究家)

皆さま、長時間にわたり、「第1回21会カンフェレンス」にご参加していただきありがとうございます。何度も申しましたが、21会はPIL、PBLの授業を目指し、そして、グローバル、イノヴェーション、リベラルアーツ、これらをすべて視野にいれて学校づくりをしていこうということが原点にあります。

そういう学校であれば一緒にやっていきましょう。21会の新しい市場をつくることも大きな使命だと思っているので、これからもいろいろなことを発信していきましょう。

・21会の志す「21世紀型教育」はGIL(Global×Innovation×Liberal arts):グローバル教育、イノベーション教育、リベラルアーツを統合した人間教育。
・21会の実践する「2つの授業」=PIL×PBL
①講義に対話を導入するPIL(Peer Instruction Lecture)型講義
②・問題解決型のPBL(Project based Learning)の学び

 

 

 

 

 

 

 

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21会校コラボ始まる 工学院×聖学院 PIL型授業そして思考力テスト

第1回21会カンファレンスが終わるや、参加していた21会校の先生方があちらこちらに結集して、学習組織化し始めた。ピーター・センゲとデビッド・ボームの「対話について」が目の前に立ち上がったのは驚愕だった。その学びのチームの一つが、工学院大学附属中学・高等学校と聖学院中学高等学校(以降工学院、聖学院)の先生方によって形成され、昨日6月3日(月)にはすぐに活動開始。カンファレンスは5月31日(金)の夕刻行われたばかりなのに、なんという俊敏力。スタートの様子をご紹介しよう。(by 本間勇人:私立学校研究家)

 

島田浩行高等学校教頭(写真)に、こんなに速く21会校コラボレーションができるのはなぜか尋ねてみた

「今春、平方校長が就任して、わたしたちの大切にしている『挑戦・創造・貢献』の教育が、さらなる発展をするという直感が学内に広まりました。最初校長が語る、PIL(ピアインストラクションレクチャー)型授業だとかPBL(プロジェクトベースドラーニング)型学びというのは、それぞれに教師が創意工夫はしていましたが、そのようなキーワードで統一してはいませんでした。ですから、授業の方法までメンタルモデルとして共有していませんでした。

それが、今の教育のままでは日本はダメになってしまうだろう、この一年、とくにこの半年で国も教育再生実行会議の方も21世紀型教育の方に大きくシフトしている。私学が取り組むべき内容とはかなり違うが、時代を創るビジョンであることに間違いはないと、私たち教師から保護者、生徒にまでこんこんと語られるので、自分たちのやってきた教育の重要性・先見性・責任性を強く感じました。

そして21会カンファレンスに参加して帰ってきた教師が、21会の各校も、まだ21世紀型教育を完全に仕上げているわけではなく、これから発展させようと正直にプレゼンしていたのを受けて、自分たちもできると気づいたし、共に生きるという平方校長の理念がスコンとはいりこんできて、すぐに共鳴した聖学院の先生方とコラボレーションを始めることになったのです。」

工学院と聖学院の英語科主任が互いの授業を見学し合った

第二言語習得論を研究し、その資格も有している工学院の英語科主任道家幸子先生は、高1の英語の授業を公開。デジタル教材を活用しながら、聴覚・視覚を使ってスラッシュリーディングなど、記憶と認知のストラテジーを披露。

このストラテジーをさらに生徒と生徒のピアインストラクション(対話あるいは教え合い)に適用し、理解を深め、わからないところは生徒が質問をするというシークエンスで授業は展開した。従来の訳読中心で構文暗記の英語の授業とはかなり違う。

大学入試には構文暗記が欠かせないからという考え方も広く高校英語界では支配されているが、ピアインストラクションを導入することによって、構文を直接教え込むのではなく、メタ認知という間接ストラテジーで、生徒自身に構文の認識が生まれるというSLA(第二言語習得論)タイプの学習戦略をとっている。

一方、聖学院の高橋一也先生は、自らの研修日とあって、工学院を訪れ、中1の英語の授業を行った。工学院の多くの先生方も見学しにやってきて、研修授業さながらになっていたが、いつもの高橋先生の授業そのものであったのは、さすがである。

高橋先生は、生徒も驚くほど美しい英語を話す。アメリカの大学院で研究していたということもあるのだろう。そして電子ボードを巧みに活用されるのもいかに使い慣れているかということの証明であるが、高橋先生は鉛筆と消しゴムと同じ感覚で活用しなければむしろ生徒の学習を阻害するという持論を持っている。そして、だからこそ電子ボードがツール以上に意味はないのであると。授業は内発的モチベーションをいかに燃やすかにすべてがかかっていると。

そこで、道家先生とシンクロしているかのように、ピアインストラクションを行った。生徒間の対話はやはりモチベーションを燃やすようだ。そして何組かにデモンストレーションをみんなの前で行ってもらった。一番目は、高橋先生と生徒で、そして握手。生徒にとって高橋先生は初対面の先生だったが、この瞬間に高橋ワールドに引き込まれてしまっていた。

クラスを学習の組織にするには、チームワークとビジョンの共有となんといってもシステム思考。そのためにマスター制度という高橋先生独自の学びの手法がある。速く問題が解けた生徒は、マスターの腕章を付加され、マスターになって他の生徒に教えるである。ここにシステム思考の種が撒かれる。そして、マスターの役割こそ自己マスタリーのトリガーになるのであると。

相互見学のあとにリフレクション コラボの醍醐味

コラボレーションのだいご味は、振り返り。高橋先生の授業を工学院の先生方も参入して対話を行った。互いに奥義が公開されたわけである。

 

中1と高1では、学びの構造も複雑になるし、学び方も異なるので、CEFR(セファール)のような学びの成長基準などを活用するのがよいのではとか、構造は大事だが、それはあくまで構造化する構造というメタ構造への気づきが重要であり、構文を暗記させるという意味ではないとか、生徒のモチベーションを持続させるには、外発的動機付けから内発的動機付けにいかにシフトさせるかであるとか・・・。様々な議論が噴出。今度は道家先生方が聖学院を訪れるとのこと。未来への希望が交換されて散会となった。

思考力テストの協働研究

その後、聖学院の数学科主任の本橋真紀子先生もかけつけ、今度は工学院の司書教諭の有山裕美子先生と「思考力テスト」の研究がスタートした。この思考力テストは入学試験の一つとして今春聖学院で行われた。このテストは、従来型の試験とはあまりに違うので、聖学院では説明会のたびに「思考力セミナー」を開催してきた。

ここで言う思考とは、対話のことである。ここで言う対話とは言語を通して考えることである。デビット・ボームはdialogueをdia=through logue=Logosと解説している。二人で話すのではなく、ロゴスという論理であり言葉であり思考であるものを通すという関係のことを対話というのだとしている。したがって、「思考力セミナー」もこの意味での対話を導入してプログラムを開発しているという。それゆえ、平方校長は、PIL型授業やPBL型授業が思考集団を形成したり、創造チームを形成するのに重要なのだと語るのである。

それにしても有山先生のこのミーティングのために準備した「聖学院の思考力テストの分析レポート」15,000字。レポートが展げられたときのミーティング参加者の感動の声はお聞かせしたかった。パッションが共有されるときの雰囲気とはこういうものなのである。

5・31 第1回21会カンファレンス 「21会型学び」

富士見丘学園の教頭大島先生は、教えない教師を続けて30年以上。大橋清貫先生が「21会ビジョン」で語った乗り越えられるべき20世紀型教育をすでに破壊的に創造してきた。富士見丘学園の柔軟かつ多様な学びを構成しているサタディプログラムの一環として「中学生のための哲学教室」を開講しているが、それを紹介し21世紀型授業としてのPILやPBLの展開の基礎を提示。

カンファレンス以前に、すでに授業の展開をYouTubeで公開。21会サイトからアクセスできるように設定。東大の山内准教授を中心に展開している米国トレンドの「反転授業」をカンファレンスで披露することにもなった。(by 本間勇人:私立学校研究家)

まずは、DVDで哲学教室の雰囲気を流した。そのシーンは次のような対話の場面。

「私は誰?」という疑問文は変じゃないか?「あなたは誰?」は変? あなたの方は変じゃない。これはどういうときに使う?相手のことを知らない時・・・。相手のことをあまり知らない時につかう。ならこれは、私のことをよく知らないということ?自分のことをよく知らないと思う人?すると、生徒の3分の1くらいが手を挙げる・・・というシーンををまず流した。

何が重要かと言うと、生徒自身が生徒自身の立ち位置から出発しているということです。一斉授業は生徒の立ち居地を無視して、教師が想定した生徒の立ち位置から出発させようとするところに問題があります。そこが問題だと気づかないできた20世紀型教育はもっと問題です。

というのも、生徒それぞれで、現地点から学習到達目標までのルートが違うのに、従来型の教師はそのルートを無視して、最終到達目標の解説をするからです。

どういうことかというと、教師が予習した内容をどう解説しようか考える。そうすると生徒の立ち居地を無視した解説が始まるわけです。このような教えることは不毛だと思うのです。

一点は、生きた知恵にならないから。知識は伝わるが、生徒がそれを自分のものにするのは難しいからです。もう一点は本来なら生徒が自分の立ち位置から学ぶべき目標まで自分の足であゆんでいくものなのに、説明することによって阻害してしまっているからです。

自分で考えて到達できる喜びを感じられない。自分の足で最終目標まで来た生徒は、あとからその自覚を持ち、授業をおもしろいと感じるものなのに、その喜びを奪うことは問題です。だから、教師の役割は3つあります。もっとも大事なのは問いを発すること。問いが思考を規定するから。

例えば「なんでせかいいちにならねばいけないか」という問いから発せられる問いが導く思考と、その質問を発する資格がある人は誰ですかという問いから発せられる思考は当然異質。教師の力量は発問。一番いいのは集団がうすうす感じている疑問の中核に突き刺さる質問をすること。その瞬間にグループは思考集団にかわる。

発問がよければいいのかというとそうではなく、その次に発問によって促されて出てくる生徒との話の整理をする必要があります。なぜなら授業時間は決まってて最終的な到達目標地点が決まっているから。つまり対話の方向性を作る必要がある。具体的には問いに対する正確な答えが返ってきたら、それに対してまた問いを発してさらに深い思考へ導く。その際対話のコントロールをするという役割です。

3つめはムード(雰囲気)を作ることが大切。どんな質問でもウェルカムなムード。私は27歳以来教えない教師だが、教えない授業で大事なのは対話だと思って今に至っています。なお、先ほどのビデオは資料3枚目にある21会サイトで見られます。

ここで司会平方先生から「PILやPBLの取り組みについて何か考えるところはありますか」という問いが投げられた。

大島先生はこう回答した。「教師対生徒だけの対話はつまらないが、ある生徒の気づきは他のみんなにも伝染する。これは思考集団が出来上がってるということ。しかし全員を飽きさせないためにやはり生徒―生徒間でこっちに飛んだりあっちに飛んだりフレキシブルにできるのが一番自然で美しいと思うので、私もそれを目指しているのです。」

 

 

 

 

 

 

5・31 第1回21会カンファレンス 開催

☆5月31日(金)、富士見丘学園で、第1回21会カンファレンスが開催された。21会メンバー校12校が、全面的にPIL型の講義とPBL型学びを展開していくこと、そのために思考力テストを重視していくことを宣言し、具体的な取り組みや成果を報告した。

してもちろん、ビジョンはGIL=グロバル教育×イノベーション教育×リベラルアーツ。背景には今話題のIBにも通じるCEFR、Aレベル、bacが横たわっているが、今回はその深層には触れず、その暗黙知を見える化したものとして、「思考力テスト」「PIL×PBL」あるいは「哲学授業」×GILについて語られた。

まずは、21会会長の吉田晋先生(富士見丘学園理事長校長、日本私立中学高等学校連合会会長、現中教審メンバー)の開会宣言文をご紹介しよう。日本の教育の問題点とそれを乗り越える21会の使命について理解できる。(本間勇人 by 私立学校研究家)

 本日はご多用の中、学校関係の皆さまはもちろんのこと、教育関係企業の皆さまに多数ご参会いただき、誠にありがとうございます。21会のお仲間を代表して、心より御礼申し上げます。また、当初企画より多くの皆さまにご参加いただき、会場が手狭になり大変申し訳なく、お詫び申し上げます。

 さて、ここ十数年来、我が国では教育の荒廃が叫ばれ、それを水面下で守って来たのは私たち私立学校であると自負はしておりますが、実際にはこの60年以上の歳月の中で、高等学校も義務教育同然の進学率98%に達し、さらには高校無償化や公立学校の中高一貫教育の実施など、まさに私学化と言ってもよい状況が加わり、私立学校はまさに逆風の時代となってしまいました。

そういった中で、内向きな偏差値重視の知識詰め込み型・暗記型の教育でなければ難関大学に合格させられない、そしてその結果のみによって学校が評価され、本来の中等教育の目的である社会性を学び、人となりを育て、将来の夢や希望を見出し、その実現に必要な知識と教養を身に付けさせ、真に自らの進路に適した大学を選択するという場ではなく、極端な言い方をすれば、難関大学入学者数が多ければ良い学校であるという状況になってしましました。そしてまさに内向きな、海外に目を向けない自己満足の教育に陥っていまいました。

 しかし時代はいよいよ変化して来ました。こういう状況下で生徒が入学していく大学の資質について、成長戦略に伴うグローバル化社会に対応した人材の育成を求める政府・財界が、大きく口を出し始めたのです。皆さまご承知のように、現在進行中の教育再生会議において、教育全般を見直し、国際社会で対峙できる人材育成に向け、多くの提言が出されております。英語教育一つとっても、突然、大学卒業条件にTOEL IBT 90点以上とか、大学の授業の半分以上を英語で実施するなど、英語さえできれば国際人であるかのごとく提言です。

さらには、今週発表された第3次提言において、グローバル化に対応した教育環境づくりを進めるとして、平成29年までを大学改革実行集中期間と位置づけるとともに、小中校における英語教育の改善などを提示し、これが、中央教育審議会におりてくることとなります。私も現在、その中教審の委員を努めさせていただいておりますが、本当にこれが正しい教育再生に繋がるのか不安を抱いております。

21世紀の厳しい国際競争を勝ち抜くのには、グローバルな人材を生み出す大学の改革を、国際戦略の方向と有機的に関連付ける必要があることは事実ですが、果たして今の大学、特に旧態依然とした教授会という組織が、これに対応出来るでしょうか。いろいろな会合でお会いする私学団体の大学の理事長や学長の先生方は、十分に理解がされておられると感じますが、そのほとんどの方が抱いている問題が、学内の統一というか教授会です。

実際に中教審に出てきていらっしゃるその代表のような教授の先生方は、未だに高校生の学力が低いとか、学習時間が少ないといった責任転嫁がメインで、自らが学生確保のためにAOや推薦入試を増やし安易に入学を許可し、さらには、大学に入学さえすれば後はアルバイトに明け暮れ、教授陣も学習するように導くような指導をしないといった実情は、一切述べられません。

制度改革以前の問題を解消しなければ、絶対に前に進まないのではないでしょうか。まさに重要なのは、国際競争をリードするグローバル・エリートを国内で育てることを怠った我が国において、グローバル・リーダーとして名実ともにふさわしい人材を、大学がいかに養成するかとう問題ではないでしょうか。

そしてグローバル人材は、決して英語ができる話せるではなく、まさにこれをツールとして活用し、古今東西に及ぶ幅広い教養を基盤にした体系的な思考力、紛争や各種交渉など現実に提起されている課題への実践的な問題解決力が要求されるものと考えます。

そのためには、私ども中等教育の段階でも、今までの知識詰め込み型の従来型の教育から、思考力を育成するPBLのような課題解決型教育に舵を切らなくてはならないのではないでしょうか。

後ほどの平方先生のお話に関係しますので、少しご説明させていただきますが、文部科学省は、本年度予算から5千8百万円を投じ、国際バカロレア・ディプロマ・プログラムの日本語版開発・導入を始め、平成30年までに現在のIB認定校16校から200校に増加させるとしました。

そしてこのことは、今回の教育再生会議の第3次提言に載せられ、このIBとともに、スーパーグローバルハイスクールを指定し、外国語、特に英語を使う機会を拡大し、幅広い教養や問題解決力等の国際的素養の要請を支援するとしました。

このことは、今週月曜日の新聞に1面でリークされ、現在のスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール事業の延長として、学校側が国際的素養の育成に努め、英語教育を重視したカリキュラムを実施していること、英語を母国語とする教員を採用していること、海外留学に実績があること、などを実施している学校に対し、政府が財政的に支援することを検討しているとされておりました。

ただこれは、あくまでも提言の段階であり、実際に中教審で審議も始まっておりませんし、予算的な裏付けも全く見えていません。IBも開発費のみの計上であり、200校にすると言っていても、現状ではその学校に対する支援もありませんし、この成果を受け入れるべく大学側が、全く理解できておりません。

しかし、私ども21会が危惧し実践してきた教育に、ようやく光が見えてきたとは言えるものと思います。失礼な言い方ですが、気付くのが遅いんだよという感じですね。

そこで立ち上がったのが、私たち「21世紀型教育を創る会」つまり「21会」です。本日は私たち「21会」の挑戦とその成果を発表させていただく会として、今後の展望を報告させていただき、教育イノベーション渦巻く21会型市場を創設していく道をともに歩むことを、同志の学校・教育関係の皆さまに呼びかけ宣言させていただきます。

最後になりましたが、当初よりこの21世紀型教育の重要性を訴え、この会の設立にご尽力いただきました工学院の平方先生、新時代教育研究所の大橋先生、かえつ有明の石川先生、TESの本間さん、本学園の大島先生、そして本日まで深いご理解とご協力をいただきました21会会員の皆さまに改めて感謝申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

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