PBL

東京女子学園 教師と生徒が学ぶ組織

今年3月、東京女子学園は、今までプロジェクト単位で行ってきた学習する組織が、一転して全体に広がった。それは、iPadが教師全員に配られたからだ。今のところは、企業が作成したWeb ベースの学習システムの活用方法を日々研鑽しているが、クラウド上の教材やアーカイブうなどを活用し、テストもできるから、たんなる技術面の話ではなく、授業や面談のあり方も大変化することになる。by 本間勇人 私立学校研究家

何よりも5月から生徒全員が所有するようになる。すると、授業風景はあっという間に一変するだろう。そのシーンは、デジタル・ネイティブの子供のいる家庭はだいたい想像がつくだろう。そして、そうでないときの授業に比べてワクワクする気持ちを抑えられないだろう。

しかし、本当のおもしろさは、これからなのである。現状の学習システムは、スキルと能力の徹底した管理システムで、大学合格実績を大いに向上するのに役立つだろう。ところが、昨今共学化の波がおさまらない時代だ。それだけでは、女子校としては、共学校を突き抜けることができない。波に押し切られてしまう。

特に、日本社会は、先進諸国の中で、女子の社会進出は低く、ジェンダーギャップの格差もありすぎる酷い社会だと世界から観られている。グローバル社会にあって、何よりこの汚名を払拭しなければならないときに、それが唯一可能な女子校という拠点が消えていくのはなんとももったいない。

哲学の土台のある東京女子学園であればこそ、そこは極めて重要なミッションだ。

実は、東京女子学園は、この抑圧社会日本を幸せに導く教育のプログラムが潜在的にある。それは昨年、プロジェクトチームが中心となってつくった「地球思考コード」である。これは、東京女子学園が教育で行っていく思考力の広さと深さのチャートになっている。つまり、知識・スキル・能力のみならず1人ひとりの才能を開発する教養の幅を示唆している。

授業やテスト、面談は、このコードに紐づいて行われるのだが、昨年まではそれはすぐにできなかった。なぜなら、それにはICTによって、地球思考コードごとに成績推移が集計される必要があったからだ。

今回の教師も生徒もiPadを1人1台使えるようになったことで、このことが可能になる。もちろん、その開発には涙ぐましい研究と研鑽が必要だ。しかし、それは教師にとっても生徒にとっても未知との遭遇を意味する。まだ、どこの学校でもそれを行っていない。だからこそ、挑戦する価値があるのだ。

授業という「いまここ」での未知との遭遇。それは教師と生徒が共に学ぶ格好の場である。そして、その場は、日本社会の女性の生き方の希望の灯火となろう。それは、日本社会全体にとって善き知らせである。

工学院 前人未到の新教育イノベーション始まる

工学院大学附属中学校・高等学校は、前人未到の新教育イノベーションを開始した。戦後の学習指導要領の歴史は、J.デューイの経験主義教育とJ.S.ブルーナーの系統主義教育の両極の間を振り子のように行ったり来たりした。その過程でデューイの考え方やブルーナーの考え方は形骸化して、問題解決能力か知識暗記力かという浅薄な二元論に陥った。

21世紀型教育ビジョンを映し出している工学院は、どちらか一方を選択するのではなく、生徒の成長、生徒の生き方、生徒の変容、生徒の才能などに目配りした複合的な学びの理論やそれが育成される環境イノベーションを揃えてきた。by 本間勇人 私立学校研究家

(左から、奥津先生、岡部先生、松山先生、平方校長、島田先生、株式会社メイツ副社長伊藤氏)

新高1は、4月1週目、2泊3日のオリエンテーションを行ったが、その際のリフレクションは、タブレットやラップトップで入力、チェックボタンの項目は、瞬時に、スプレッドシートに書き込まれ、個人別、クラス別、男女別などの集計もまとまる。その段階でGrowth Mindsetの状態が、どうだったか先生方は共有できる。生徒と共に手ごたえを感じ、新高1の学園生活が始まったのである。

2週間後、上記写真のカリキュラムマネジメントチームが集まって、200字記述のデータ分析結果も掛け合わせて、生徒一人ひとりの状況やクラスの状況などをリフレクションをした。夏前にもう一度集計するから、生徒の変容など様々な特徴があらわれてくる。ふだん接している先生方のリアルな感覚と生徒が自己リフレクションしたときの感覚のマッチングを行うのだ。

このシステムは、今年一年行ってプロトタイプができるが、外部スタッフとのコラボレーションによってそれは可能になった。パッケージ商品を導入するのではなく、教師や生徒の実態に合わせて、リサーチ機能コンテンツをデザインし、分析システムをプログラミングしていく。教育コンテンツとエンジニアリングとデザイン思考。綿密かつ効率の良い会議システムの流れによって可能になる。

リアルスペースにおける会議は1時間と決め、その前後で、共有ファイルや共有議事録に書き込みながら、課題意識をシェアして立ち臨む。議論は、何を解決し、次にどう生かすか。さらに何を行うか。

カリキュラムマネジメントシステムとは、「思考コード」をベースに知のマネジメントをしていくことだが、その知を限りある時間の中で、生徒が最大限力を発揮できるようにする舞台裏の強力なサポートシステムこそが重要である。

この領域は外からなかなか見えない。授業という領域で、21世紀型教育の教育イノベーションは華やかに見えるが、それは氷山の一角。水面下にあるサポートシステムは複雑複合的。学習理論とカウンセリングマインド。データサイエンティスト的視点、そしてエンジニアリング頭脳。これらが効率よく循環するシステムが欠かせない。言うまでもなく、この部分は、今までの学校になかった新教育イノベーションである。

 

アサンプション国際と香里ヌヴェール学院 本機構に加盟

大阪カトリック2校であるアサンプション国際と香里ヌヴェール学院が、いよいよ21世紀型教育機構に加盟。両校は、昨年、21世紀型教育改革、共学校化を宣言し、PBL、イマージョン教育、ICT教育の研修を行ってきた。その過程で、カトリックの精神であり、国連のあらゆる宗教、民族、性別を超えた共通の理念でもあるman for othersというMFOマインドを共有し、世界の痛みを解決するグローバルシチズンシップというメンタルモデルをもった学習する組織が出来上がった。

そして、今春、その両校の協働改革は、小学校と高校の大人気という結果を導いた。もちろんこの改革は始まったばかりである。来春小学校、中学校、高校とすべてにおいて大反響を得るべく日々熱心に取り組んでいる。

そのインパクトはすでに、関西圏の教育に子どもたちの未来のための21世紀型教育改革をという大きなウネリを生み始めてもいる。

大阪カトリック2校の21世紀型教育改革のトータルリーダーは、聖パウロ学園の理事長であり、21世紀型教育機構の副理事長でもあり、何といっても、日本カトリック学校連盟会長である高橋博先生が辣腕をふるっている。

(高橋先生は、ご自身の学校である聖パウロ学園の21世紀型教育改革の研修のファシリテーターも行っている。)

アサンプション国際中学校・高等学校の校長は、江川昭夫先生。自ら英語の教師として、校長哲学対話をアルベール先生と実施。英語も使って生徒と対話する実践的改革を行っている。

香里ヌヴェール学院の改革リーダーは、石川一郎学院長。「2020年の大学入試問題(講談社現代新書)」「2020年からの教師問題{ベスト新書)」の執筆でも有名で、日本全国を飛び回って講演活動もされている。最先端の21世紀型教育を香里ヌヴェール学院の先生方と共に創っている。

21世紀型教育機構加盟校は、東京から埼玉、静岡、大阪へと全国に広がり始めた。この21世紀型教育改革を断行することは、子どもたちと共にいまここで未来を手に入れることを意味する。全国に広がること。それは希望が同時に拡大することである。

八雲学園 共学化への準備着々 St.Andrew’s School Turiとの交流

2018年度から共学校に転換する八雲学園。その理由は多角的であり、複合的であるが、決定的なのは、ラウンドスクエアに加盟したことだ。IB(国際バカロレア)創設時の中心人物クルト・ハーンが、世界のエスタブリッシュな私立学校の協働態であるコミュニティを創設した。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
(いっしょに歌って、踊って、心を響かせて交流は盛り上がった。ケニアの中1の男子が、日本語で涙そうそうを熱唱した時、八雲生は全員スタンディングオベーションで称えた。)
 
 
八雲学園中学開設時に姉妹校になった全米でもトップクラスのケイトスクールもこのラウンドスクエアに加盟している。姉妹校ケイトスクールとは互いに教育力において刺激し合ってきたので、4年前から八雲学園もラウンドスクエア加盟の準備をしてきた。
 
その準備の出発点が3ヶ月留学である。毎年選抜された高1生12名を対象に、UCサンタバーバラで、八雲学園特注の留学プログラムを実施している。
 
 
(交流前は、まずはパワーランチ。腹ごしらえしながら会話は弾む)
 
すでに中学3年間の英語教育集大成プログラムとして、全員参加のサンタバーバラ研修旅行があり、八雲学園のハイレベルな英語教育は有名だが、この3ヶ月留学は、グローバルエリートと共に学び、議論し、世界の痛みを創造的に問題解決する力を身に着ける超ハイレベルな英語による高次思考力とグローバルリーダーを養成するプログラムなのである。
 
あれから4年たって、国際会議で英語を使って議論ができる生徒が学内に40人以上誕生した。実は3ヶ月留学から戻ってきた生徒のための授業にエクステンションクラスがあるが、そこには留学に行ってなくても英語力がCEFR基準でB2ぐらいあり、意欲の高い生徒は参加できるので、年々その数は増えている。
 
 
(音楽交流は、まず八雲学園のドリル部から。迫力と艶やかさに衝撃が伝わった。)
 
実際3ヶ月留学一期生は、今年卒業したが、その大学進学実績はなかなかのもの。国公立大学、上智大学、立教大学などに進学しているが、海外大学に進学する生徒も現れた。私大は合格しているが、再度国立大学医学部に向けて準備を開始した生徒もいる。
 
しかし、最大の成果は、世界のエリートと頻繁に交流できるようになったことだ。すでに5年前から、ケイトスクール以外にイエール大学との国際音楽交流会を行っているが、いよいよ42か国170校が正会員として加盟しているラウンドスクエアの学校と交流が始まったのである。
 
 
(静かな祈りのような音楽からステップを踏みながら明るく楽しく歌まで1時間の公演だった。)
 
この170校の学校は、当然海外修学旅行を行っているが、旅先の大使館などにより、そこからラウンドスクエア加盟校も立ち寄るのがルーティンとなっている。今回も、ケニアのSt.Andrew’s School Turiの生徒29名が、八雲学園から徒歩15分のところにあるケニア大使館に立ち寄ってから、加盟校としての八雲学園を訪れるというサプライズ国際交流があった。
 
八雲学園も、すでにサンタバーバラに行ったときは、ケイトスクールと交流しているわけだが、これは年間スケジュールできっちり準備して行われるものだ。しかし、今後はSt.Andrew’s School Turiのように、日本に訪れたら、八雲学園との交流オファーを突然してくるという機会は多くなるだろう。
 
 
(八雲学園の吹奏楽の迫力と美しさも共有。)
 
St.Andrew’s School Turiのように、周りの国々のエリート層の子弟が集まってくる全寮制の私立学校が多いため、日本では想像できないようなノーブレスオブリージュな生徒ばかりの集団が訪れるのだ。
 
外交官などの子弟が駐在先で学校を選択する時、IB認定校とラウンドスクエア加盟校の2つを持っている学校をまず探すと言われウ程だ。交流する際には、ウェルカムの精神と高度な言語能力と高次思考力と何と言っても教養が必須となる。
 
 
(吹奏楽の演奏に驚きと満足の表情のSt.Andrew’s School Turiの生徒)
 
幸い八雲学園はもともと教育総合力を重視していたために、このようなサプライズ国際交流への対応力を身につけることができた。
 
そして、このラウンドスクエアの潮流は共学校である。となれば八雲学園も共学校になるしかない。これが八雲学園の共学化の根本的な理由である。
 
 
(別れ際、近藤校長自ら空手を伝授するシーンも)

工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(3)ザ・リフレクション

オリエンテーション3日目最終日は、3つのリフレクションプログラムが実施された。1つ目は、校歌の練習を通して、伝統に流れる普遍的精神の響きを共感した。
 
2つ目は、3日間のオリエンを通してのリフレクション。Growth Mindsetができたかどうか、自分軸を自己認識できたかどうか、iPadやノートパソコでWebベースの回答フォームにチェックボタンをクリックしたり、200字記述の回答を書き込んだりした。
 
 
(吹奏楽部などで活躍している内進生のクラスが、デモンストレーションを行って、そのあと全員で合唱。)

3つ目は、一文字漢字に想いを込めた各クラスのアイデンティティを発表。
 
工学院の校歌の中には、「雨に嵐に、うち耐えて」という文言がでてくるが、合唱の響きの中に、オリエンのプログラムでも体験した「プラス思考」や「コラボレーション」というスキルの重要性を想起したに違いない。
 
「学び舎」という文言には、まさに今回のワークショップ型合宿プログラムに映し出された工学院の学びの環境を想起しただろう。
 
 
「貫き徹おす 真心」には、メンタルモデルとしての「自分軸」を今後どのように徹底していくのか、「重き使命」には、自分と他者とが共生できる世界をいかに開いていくのかを想い描いてきたオリエンのプログラムをリフレクションすることにつながったと思う。
 
Web ベースで書き込むオリエン全体を通してのリフレクションは、多様なプログラムや授業をやりっ放しにせずに、生徒一人ひとり、それぞれのクラスの強み弱みをリフレクションして見出し、さらに学習方略のヴァージョンアップを工学院全体でシェアしてくカリキュラムマネジメントシステム創出の第一歩を歩み出したシーンである。
 
メンタルトレーニングでも、プラス思考はリフレクションによって生まれてくることを確認したし、実はそれぞれのプログラムが終わるたびに、リフレクションを繰り返し実施してきた。<プロトタイプ→実践→思考→アウトプット→リフレクション→リファイン→・・・>の連続が肝だったのである。これによって、はじめて学びのポートフォリオが蓄積していくわけだが、従来の教育では、アナログで行われてきたものだ。
 
しかし、これだと、物理的時間が膨大で、生徒が個々でやり、AO入試や東大推薦入試などに挑戦する一部の生徒にしか適応されてこなかった。
 
 
メンタルケア、学習ケア、進路ケアは、従来の日本の教育では、どうしても生徒全体に行うことは難しかった。
 
欧米の名門私立学校などでは、1クラス12名くらいのサイズであるし、学費も年間300万くらいするから、チュータリングシステムも充実している。
 
日本の場合は、クラス担任のボランティア的行動に頼るしかなく、私立学校は日本全体の水準からみればはるかに面倒見がよいが、どうしても模擬試験の成績の集積で面談をしていくことが中心となり、1人ひとりの創造的才能発掘までには手が届かない。
 
 
新学習指導要領で、今回の同校のワークショップ型オリエンですでに行われている「主体的で対話的な深い学び(アクティブラーニング的視点で)」の活動が中心的柱とされているが、これを実行するために「カリキュラムマネジメント」をしなければならないことになっている。
 
しかしながら、日本全体の教育現場では、そもそも「主体的で対話的な深い学び」を実行できるかどうかもわからないし、「カリキュラムマネジメント」を行う指標すらない状態(工学院は思考コードという指標を独自に完成させている)である。そして、実はこのマネジメントは、2020年に生徒1人1台のタブレット型パソコンの活用という環境が前提になっている。
 
 
この理想的な学びは、先進諸国ですでに進んでいる21世紀型スキルの学びをモデルにしているようであるが、21世紀型教育の基礎が何もないところでは、絵に描いた餅で終わるだろう。
 
そういう意味で、工学院大学附属高等学校の新高1のカリキュラムマネジメントシステムは、学内のプロトタイプの範囲を超えて、日本の教育のモデルになるだろう。同校の教育それ自体が、社会に貢献することになるだろう。このアクションもまた、「挑戦 創造 貢献」という同校の理念の体現でもある。
 
300名弱の生徒が、カリキュラムマネジメントリーダーの岡部先生の説明と担任の先生方のファシリテーションによってサクサク入力していった。「自分軸」200字記述も3日間を振り返りながら、未来に想いを馳せた。
 
 
全員がフォームに入力するや、スプレッドシートに瞬時にデータが流れ込み、事前に行っていたサンプリングデータとの対比において、Growth Mindsetのスコアが119%という数値になった。学年主任の松山先生が、前日の夜の教師リフレクションミーティングで生徒の自己変革に大いに手ごたえを感じていると高校担当の先生方と共有していたが、それがスコアにも反映した。
 
カリキュラムマネジメントシステムの肝は、教師の豊かな感覚とデータの高感度な抽象性の重ね合わせである。両者が一致することは、もちろん重要であるが、ズレがあったとき、その理由を話し合うことによって、さらなる生徒の成長とそれをサポートする学びの環境を進化させることができる。
 
 
それから、最も大事なことは、学年やクラスというマクロ的なデータと生徒1人ひとりのマイクロスコアのズレをきちんとリフレクションすることである。
 
生徒の中には、「今回の合宿で、みんな話し合って、共感すべきところと違いを見出して尊重し合っている姿に感動した。でもまだそこに入っていけない自分がいることにも気づいた。今後の高校生活で、自分を変えていきたい」と率直に書き込んでいる生徒もいた。
 
岡部先生は、そういう自己認知ができるオープンな環境であったことは確かだけれど、それと生徒1人ひとりの状況は違うから、全体の雰囲気がよかたったからそれでよいというわけにはいかない。ただ足並みをそろえるだけではなく、1人ひとりの想いや価値意識を尊重したサポート体制が肝であると。それには、今回のデータをクロス集計や多変量解析して、カリキュラムマネジメントミーティングでビジョンのヴァージョンアップをする学びの方略を練っていく予定であると語ってくれた。
 
 
今までのように競争社会のときには、足並みを揃えるリーダーが勝ち組だったのだが、21世紀というハイブリッド化したグローバリゼーションの光と影が交錯するダイナミズムの中では、そのようなFixed Mindsetでは未来を創ることはできない。日本の教育を変えなければ、生徒たちの未来に備えられないという平方校長の意志は現場の先生方にも浸透している。
 
3つ目のプログラムは、オリエンのハイライト。各クラスの代表が、自分のクラスのアイデンティティを漢字一文字で表現し、その理由をプレゼンする。まさにGrowth Mindsetが大きく膨らんだ瞬間だった。
 
同校サイトによると、たとえば、こんなプレゼンとなった。
 
「3年間を自分の目標に懸けていきたいという思いでクラス目標は「懸」に決定。不安が期待へ変わり、絆を深めるいい経験になった。自分の主張の仕方を理解したりポジティブな考え方について学んだりする機会となった。」
 
 
「みな知り合いのクラスで2度目のオリエンでした。高校から入ってきた人たちとの新しいコミュニケーションが始まり新鮮でした。MoGの報告会があり、刺激を受けた。新しいことや新しい人に触れるチャンスはとても大切だと実感した3日間だった。」
 
なるほど、Fixed Mindsetが Growth Mindsetに開かれたオリエンテーション合宿だったのである。
 

工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(2)自分の殻を破る信頼関係

工学院大学附属高等学校の高1オリエンテーション2日目は、3つのプログラムが行われた。
 
1つは、International Language Houseのスタッフと協働してパフォーミングアーツを実施。英語イマージョンで、しなやかにエッジの効いたダンスとのびやかに歌う2つのミュージカルを全員で演じ切るプログラム。
 
 
(オリエン合宿の朝。ここから工学院の高校生活が始まる。)
 
 
2つ目は、交流分析手法で、自分のコミュニケーションが、相手に合わせてしまうものなのか、抑圧的だったり攻撃的だったりするのか、共感的なコミュニケーションを行うタイプなのか、自分のコミュニケーションを仲間と話し合いながらモニタリングしていくワークショップ。
 
3つ目は、「メンタルトレーニング講習」。東海大学の宍戸渉先生を招き、モチベーションを高める「目標設定」の方法や「プラス思考」が身体の表現にどう表れるのか、ペアワークしながら、互いにモニタリングしていくワークショップ。
 
パフォーミングアートでは、ブロードウェイで行われているミュージカルのダンスの振り付けをそのまま行うため、決してやさしくないが、大切なのは、まずやってみるという挑戦するマインドをかきたてること。
 
 
英語で歌いながら、しなやかにクールに踊ることに対し、恥ずかしがる自分の殻をいかにぶち破るのか。それは、生徒1人ひとりの中で衝撃的だった。
 
しかし、やりきる心根は、大切な体験だったし、才能あふれる生徒が、本番で演じる直前に、スタッフにスカウトされてソロを踊るというシーンも感動的だった。1人ひとりが、いまここで変わること、挑戦すること、協力すること、それぞれの才能を称えること、それを演じりきること。高1生それぞれが自分の殻の破れる音を、今回のミュージカルの響きに聞いたに違いない。
 
交流分析では、他者に合わせてしまう自分、攻撃的な自分が、ときどき顔を出すことを仲間との対話の中で再認識したり、ずばり指摘されたりして、いかに自分のポジティブな気持ちやネガティブな気持ちを伝えあえる信頼関係が大事なのか、これもまた衝撃的だったに違いない。
 
 
信頼関係は、自分が他者を受容し、一歩自分が踏み込むことで生まれる。つまり、小さな自己変容が創り出すことなのだ。自己変容は、他者との信頼関係を生み出し、結局新しい自分の可能性に気づく創造的なアクション。
 
メンタルトレーニングでは、自分の何気ない言動に、表情に、志の高い憧れの目標をつかめるかどうかヒントが隠れていることを体験。ペアワークによるモニタリングを通して気づいていくワークショップ。本気ジャンケンを行うたびに、互いに問いを投げかけ、応えていく。
 
そのときの言動や表情の反応の分析をし、「プラス思考」がどうやったら心に宿るのかワークショップが行われていった。パフォーミングアートで破れた殻をさらに脱ぎ捨てる。Fixed MindsetからGrowth Mindsetへの広がり。
 
 
しかしながら、このしなやかな精神は、メンテナンスが必要。放置しておくとすぐに逆戻りしてしまう。持続可能にする。それは、いかにしたら可能か?
 
その答えは、今回のオリエンテーションの一人ひとりにとっての衝撃的な体験の中にある。言いたいことが言える仲間。それでいて、互いに尊重できる関係。葛藤のない関係はいまも、これからもない。しかし、その葛藤をプラス思考に変えるも、マイナス思考に変えるも、仲間に支えられ仲間を支える自分次第。
 
そんな自分を常にリフレクション出来る仲間との関係、教師との関係を見つけ、築いていくこと。今回のオリエンテーションの目標の共有は達成されただろう。
 
 
 
「夕食後のホームルームで1・2・3・8組は春休み中にフィリピンとベトナムのMoGに参加した生徒たちの報告会を行いました。
それぞれの国がどんな問題を抱えているのか、現地の起業家がどのような狙いでビジネスに取り組んでいるのか、自分たちが悪戦苦闘を繰り返しながらどのように活動してきたのかを報告し、まだ活動は終わりでなくこれから先にも続いていくことなので、ぜひ多くの人に協力をしてほしいと訴えていました。
仲間が経験した貴重な体験を共有し、より多くの生徒の刺激になったように思います。」
 
このプログラムは、もともとはなかった。生徒が、自分たちのクラスのビジョンを共有するホームルームの対話の中で、企画が生まれ、先生方を説得して行われることになった。まさに起業家精神!このようなGrowth Mindsetが、高校から入学してきた生徒と共に大きくしていく3年間が、これから始まるのである。
 

工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(1)自分を表現し、自分というキャラクターを形成する5つの要素の関係に気づくワークショップ

2017年4月、再び「高校1年」の季節が巡ってきた。しかし、今年の高1は、特別な意味を時代が付与している。すでに21世紀にはいって17年も経とうとしているにもかかわらず、まだ20世紀近代社会の光と影のうちその影の部分を払拭できないどころか、ますます混迷をきたしている時代であるため、いよいよ持続可能な社会の形成に挑む最終目標グローバルゴールズに向けて新しい知を身につけざるを得ないプレ学年という歴史的位置づけを背負わされている。
 
 
2020年大学入試改革とは、たんに大学制度や入試問題の表層的な変更を意味するわけではない。高大接続が、その新しい知を生み出す契機となる「事」を意味している。同時に、その新しい知がいかなるものであるか、実際には予測不能なぐらい産業構造や科学技術、脳科学、ICT技術などが急速に進化し、日常生活の制度設計の変化の速度を超えてしまっている局面に衝突している時代でもある。2020年の前夜、その最も不安定な時代にタイムスリップしたかのような15歳が、今年の「高1生」なのである。
 
この近代社会の前代未聞の歴史的ウネリの響きを感じて、社会の制度設計の意志判断にいよいよ参画する直前に立つことになる高1という年齢は、いまここで特別な意味を持った高1として迎えられているわけである。しかし、その特別な意味が、自分事として受け入れられる準備ができずに、その自己決着を先送りされたまま、高校に進学するのが、今に到る日本の教育制度の常だった。それゆえ、先進諸国の中でも未来に不安を抱き自己肯定感を抱けない高1生が多いという結果になっているのではないだろうか。
 
 
だからこそ、工学院大学附属高等学校は、平方校長、高1学年主任の松山先生を中心に先生方一丸となって、この歴史的なウネリの響きを感じつつ、いまここで自己を見つめ、自己の可能性に気づき、その可能性が他者にどのような影響を与えるのかを、仲間と共に語り共感しながら、未来のビジョンを開くオリエンテーションを開始した。by 本間勇人 私立学校研究家
 
工学院の高1のオリエンテーションは、ヒルトン小田原リゾートで行われる。まるまる3日間、生活を共にして語り合い、議論し、自己を見つめ、他者を想い、未来の社会と自分をイメージしていく。
 
初日は、自分という人間を表現する漢字一文字を選択する意志決定をするところから始まった。漢字の意味と自分の想いや考え方、価値観、生き方などの背景文脈をつなげていく。自分のメンタルモデルを内側から明らかにしていくワークショップ。
 
 
しかし、この段階では、まだ自分自身が気づいていない自分を表現するには到らない。あくまで、自分の見える部分を見渡しながら、自分の目標を決め、そこからバックキャストしながら自己表現をしていく。
 
次のワークショップは、自分というキャラクターを分析して、チームでその結果をどう考えるか対話していく。いろいろな人間関係の問題に直面したときに自分の選択判断に迫られる。自分は躊躇して行動できないとちょっと気持ちが苦しくなる。
 
 
そのとき仲間が躊躇しているのではなくて、まずはまわりの状況や他者の状況をしっかり知ってから、次に進もうとしているのではないのかと助言する。躊躇している自分というネガティブなお思い込みを払拭して、先に進めるわけだが、このような対話の千行は、なかなかキツイ。
 
 
(ハイブリッドインターナショナルクラスのホームルームでは、クラスのビジョンを英語で共有)
 
しかしながら「知る」ということが、見える物だけを組み合わせて成り立つわけではないことに気づくセンシティブな過程は、仲間がいるから不安や恐怖から逃げないで立ち臨めるという大切な経験を積み重ねてける学校だということが了解できるようになっていく。
 
そして、なんといっても、今回は高1担当の先生方だけではなく、高校2年、3年の担当の先生方も全員がファシリテーターとして参加している。ふだん授業でPBL(プロジェクトベーストラーニング)を行っているので、チーム学習がベースのワークショップ型オリエンテーションは先生方全員による内製的なプログラムとして実行できてしまっている。
 
 
(熱く語る学年主任松山先生)
 
もちろん、このようなオリエンテーションのPBLは、パッションベーストラーニングという性格が前面にでてきているのではあるが。そのため、ワークショップとワークショップの間の時間や就寝前のホームルームでは、生徒のンマインドはオープンになりクリエイティブな精神が膨らむ。明日のプログラムの一部を隣のクラスと合同でできないかと、先生に交渉しにやってくるメンバーがはやくも立ち現れるシーンも生まれた。
 
 
(プログラムのヴァージョンアップの交渉にやってきている生徒)
 

【速報】静岡聖光学院中学校・高等学校 21世紀型教育機構に加盟!

静岡聖光学院は、アカデミックな校風と教育を目指して、教科の枠にとらわれない“学究的世界”を生徒ともに創っています。ここには、本機構の各加盟校が実施しているPBL(Project based Learning)、C1英語、ICT教育、リベラルアーツの現代化が凝縮されています。

(写真は、同校サイトから)

たとえば、このアカデミックな活動の一環として「Visit Shizuoka」というプロジェクトを実施。中学1年生の英語と社会科(地理分野)の授業を融合し、静岡を訪れる外国人観光者に向けての広報活動を行うという企画を実施しています。

2019年に行われるラグビーW杯、2020年に行われる東京オリンピック。両大会とも多くの外国人が日本を訪れることが予想されます。そこで各大会に来る外国人を対象に静岡の魅力を伝え、静岡に足を運んでもらうことによる経済効果を見込んだ広報活動を行うのです。

生徒は自ら資料の収集、プレゼン作成、発表までの過程を取ることで静岡についての愛着と理解を深め、他者に発信するための情報収集・まとめ・表現する力を身につけようと努力しています。

すでに、静岡大学の外国人留学生などの参加者に、日本語と英語の両方でプレゼンテーションを実施。優秀者はラジオ「FM-Hi!ひるラジ!静岡情報館」で発表(2月17日12時15分〜30分放送回)するという成果もあげています。

このようなアカデミックな活動を、さらに日常の授業をはじめとする同校の教育活動全般に徹底するという気概を受けとめ、各機構の加盟校と共に、21世紀型教育をより一層広め深めていきます。子どもたちの希望と未来は、いまここに開かれているのです。

富士見丘 生徒と教師が共に学ぶ強烈な組織

今年3月19日(日)に関西学院大学で開催された全国スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会(SGH甲子園2017)において、高校2年のチーム(3名)がプレゼンテーション部門(英語発表の部)で優秀賞を受賞した。
 
同時に、優秀賞3校の中から1校が選出される審査員特別賞も受賞し、7月に開催される国際的な研究発表会「Global Link Singapore 2017」に最優秀校とともに招待される快挙を成し遂げた。
 
各SGH校は、文科省に認定され、いずれの学校も、探求学習、プレゼンテーション、論文編集などに力を注いでいる。そのハイレベルな環境の中での受賞であり、シンガポールでのいわば国際会議に招待されたわけだ。
 
富士見丘の生徒の探究学習における力量がいかにすさまじいものであるかわかるだろう。この強烈な学ぶ力はいかにして可能なのだろうか。その秘密を探ってみたい。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
 
 
その秘密は、実は生徒と教師の信頼関係を基礎に共に学ぶ組織になっているところにある。この共に学ぶ組織とは、マサチューセッツ工科大学の上級講師であるピーター・M・センゲ博士の研究成果で、グローバル企業のプロジェクトチームのプロトタイプとして多く活用されている。また、次期学習指導要領の主体的で対話的な深い学びの考え方にその影響を与えているほどの重要なチームワーク及びリーダーシップ論。
 
1 ビジョンの共有
 
共に学ぶ組織の条件は5つあるが、そのうちの1つが「ビジョン共有」。富士見丘の生徒と教師は、共に「持続可能」なグローバル社会を創造するというビジョンを共有している。「サスティナビリティから創造するグローバル社会」がSGH校の大テーマであることからもそれが授業の中に浸透していることが了解できる。
 
 
(チームワークとビジョン共有が大きな力となった)
 
また、SGH校に認定される以前から、学校全体でエコ活動に取り組んでいる。近隣の商店街と協働して生ごみを有機肥料に変換して活用する持続可能な環境を追究しているのは、その代表的な活動である。
 
2 メンタルモデル
 
学びの組織は、ビジョンを共有するだけでは稼働しない。1人ひとりが共通の価値観をもたなければそのビジョンに向かって1人ひとりが活動できないからだが、富士見丘の場合は、建学の精神自体が、「忠恕」という相手を尊重したり思いやったりする寛容な精神をメンタルモデルとしている。
 
 
(タイやUAE,イギリスなど多くの国の交換留学生を受け入れるおもてなしの精神が浸透しているシーン)
 
3 チームワーク
 
共有されたビジョンを実現するには、メンタルモデルをシェアしたメンバーが協働して活動する必要がある。チームワークが必要であることは言うまでもないであろう。
 
 
(高校1年生「サステイナビリティ基礎 ―慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科大川研究室によるグローバルワークショップ 」今回のテーマは「Connecting-Creating new alliance relationship」。3~4名の各チームがそれぞれ一国の立場に立ち、それぞれの国の外務大臣による交渉を経て、利害関係が一致した国同士が経済提携の合意文書にサインするワークショップ。「経済」を現実の世界で学ぶ機会は、一般の学校にはない。)
 
そして「忠恕」があるからこそ、外部の学びの組織と連携できる。慶応義塾大学や上智大学、イギリスやシンガポール、ロサンゼルスをはじめとする海外のたくさんの学校と信頼関係を築き、連携できるのは、富士見丘にはチームワークづくりの土台がすでにあるからである。
 
4 システム思考
 
論理的思考、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングを統合して、自然と社会と精神の循環を持続可能なシステムにする思考。
 
富士見丘では、岩手県釜石のフィールドワーク、シンガポール、台湾、マレーシアでのインタビューやリサーチなどを通して、自然に現れている問題、社会に起きている問題、世界の人々の痛みの問題を明らかにし、それらを創造的問題解決して、再び自然と社会と精神の持続可能な好循環を創り出そうとしている。
 
 
(日本とマレーシアの経済を比較し、問題を明らかにし、解決策を提言していく。準備段階と実際にマレーシアのフィールドワークを終えてからのプレゼンを比較すると様々な気づきやアイデアが加わり、その飛躍的な成長ぶりに驚愕。)
 
最近では、STEAM教育に力を入れているため、アート分野とSTEM領域の横断的な学びを行い、システム思考からさらにデザイン思考に発展させている。
 
5 自己マスタリー
 
チームワークにしろシステム思考にしろ、思考技術を自己陶冶することは欠かせない。また、グローバルな団体と連携したり、海外でリサーチをし、プレゼンをするにはC1英語(英語のスキルだけではなく、英語で考え、英語で議論ができるレベル)のIELTSやTOEFLを土台にした英語力を養成する特別講座やe-Learningの機会も完備している。
 
 
(留学先で、科学の授業で質問しているシーン。質問を英語でできることが自己マスタリーの重要ポイント)
 
また、何より、イギリス、米国西海岸、オーストラリアなどの短期・中期・長期の多様なヴァリエーションの留学機会や修学旅行も完備している。そして、模擬国連部は、学びの組織の5つの要素を結合させた象徴的な活動でもある。
 
これらの機会は、教科書に収まりきれない無限の学びの階梯が続く。それゆえ、生徒のみならず、生徒共に教師も学ぶ機会となる。生徒も教師も自己マスタリーをする機会がある知的好奇心・知的刺激に満ち満ちた学校なのである。
 
 
(結成まもない模擬国連部だが、その活躍は目覚ましい。)
 
さて、この5つの要素を統合しなければ画竜点睛を欠くことになる。どうやって統合するのだろうか?それは生徒と教師の信頼関係を持続可能にする「対話」によってである。いつでもどこでも、この対話で満たされている学校それが富士見丘。米国のエリート学校であるプレップスクールに相当する小規模学校がゆえに(学費は、それらプレップスクールの3分の1であることも忘れてはならない)、1クラス40名以上の学校ではまったくできない「対話」が可能なのである。
 
しかもこの「対話」は、生徒が常に未知との遭遇をして、それを乗り越えるにはどうしたらよいのか内発的なモチベーションとしてのニーズがあるがゆえに行われる。つまり、常に必要から生まれた真剣勝負としての対話なのである。
 
 
(米国西海岸修学旅行事前準備。対話が満ち満ちている、)
 
もはや教科書程度の知識量など、彼女たちにとっては、グローバルな無限の知の前では、ほんの少数の分量に過ぎない。自然と社会と精神の実際の問題を解決するにはどうしたらよいのかという必要から生まれた本物の学びが富士見丘の教育の豊かな質を生み出しているのである。
 
 
(シンガポールの名門校ラッフルズ女子高校との対話。富士見丘の対話はグローバル世界でも広がりをみせる。)

聖徳学園 国際貢献プロジェクト学習の成果

3月14日、聖徳学園で「日本にいながら出来る国際貢献」授業の成果報告会がありました。高校2年生全員が1年間かけて、担当する国の抱えている問題を分析し、自分たちができる貢献を行っていくというグループプロジェクトです。グループに分かれて実践してきた活動成果をクラスの代表者が発表しました。 By 鈴木裕之 :海外帰国生教育研究家

国際貢献するという気持ちが大切であるのは、ユネスコ憲章前文の有名な一節「心の中に平和のとりでを築く」を引くまでもなく、相互理解を通じた平和の実現につながるからです。一方で、国際貢献するという気持ちは、情報や知識の伝達のように簡単に届けられるものではありません。いくら講義によって「現実」を伝えたとしても、それが貢献という行動を起こすことに至るのは難しいものです。

聖徳学園のグローバル教育センター長の山名先生は、「人と人との繋がり」に注目します。そこにこのグループプロジェクトの眼目があります。さらにその「繋がり」は、外に出る体験ばかりではなく、想像力によって見えない他者にも及んでいくのだと語ります。

今回のプロジェクトで生徒たちが担当した国は、パナマ、インドネシア、ルワンダ、ミクロネシア、ラオス。名前は知っていても、実際に人々がそこでどんな生活をしているのかまでは、多くの人はよく知らないのではないでしょうか。山名先生は、JICA(国際協力機構)の職員と協力しながら、クラスごとに担当の国を割り当て、そこから生徒たちの探究心が湧き起こるような設定をしました。5つの国を比較して調べるのではなく、自分の担当国が決められるというのは、自分の生まれる国を選べないことと同様、ある種の「運命」とも言える前提です。それが定められるからこそ、その国の人々に感情移入し、真剣に問題点を探ろうとするのです。

それぞれ異なる国から支配を受けてきたこれらの国々を歴史的に見てみることも一つのアプローチとして興味深いことです。しかし、貢献という視点から考えるとき、歴史に問題の所在を求めても解決にはなりません。生徒たちは、それぞれの国が抱えている問題をどうすれば少しでも解決に近づけるのか、今自分たちが日本にいながらできることを現実に実行していくことに集中していました。そういう意味ではこの1年間のプログラムは、PBLのモデルであると言ってよいでしょう。

PBLの推進機関であるBIEのジョン・ラーマー氏は、PBLに必要な要素を4つ挙げています(EDUTOPIA「PBL: What Does It Take for a Project to Be "Authentic"?」より)。

  1. そのプロジェクトが教室を越えた現実世界のニーズを満たすか、または生徒の生み出したものが現実の人々に利用されること。
  2. そのプロジェクトが生徒の生活に関わりのあるトピックや問題(または近い将来彼らが直面する問題)にフォーカスされていること。
  3. たとえそのプロジェクトが架空の状況設定だとしても、現実的なシナリオやシミュレーションに基づいていること。
  4. そのプロジェクトが実際の現場で大人や専門家が使用するツールやタスクを伴っていること。

聖徳学園の国際貢献授業では、途上国の衛生に対する意識を向上するためにポスターを制作したり、途上国への関心を高めるためにブログやツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアに記事や動画を掲載したりするなど、上記の要素を満たし、なおかつ現実社会にイノベーションを起こすレベルにまでチャレンジしていることが分かります。

「模擬国連」が国の代表として政策をシミュレーションし、交渉という政治的側面に意識を向けるのに対して、「国際貢献授業」は、一市民の視点からできることを考えるという点に特徴があります。同時に、自分一人ではできないことがことがあるという限界への気づきが、仲間や関係する外部団体との連携に繋がっていくという好循環を生み出しているのです。こういう活動を通して、中には国際政治の舞台に立とうとする生徒も出てくるのでしょう。聖徳学園では、両者のバランスがうまく配分されています。

高2生5クラスの発表が終わると、オーディエンスであった高1生とのグループディスカッションが行われました。このディスカッションによって先輩の経験が後輩たちに手渡されます。もちろん後輩たちが担当する国は先輩とはまた異なる国になるのかもしれませんが、国についての情報や知識よりも、もっと大切な気持ちが引き継がれるのです。

さらにこの気持ちはⅠCTによって増幅されます。ツイッターやYoutubeは彼らにとって、ポスターを作るのと同じ感覚です。それは、世界に一斉に配信されるという意味で大きな可能性を秘めています。当然リテラシーは磨かなくてはいけません。使う言語についても、日本語で発信するのでは効果は半減以下です。現地の人に届けるメッセージであれば、英語でも効果は薄いかもしれません。ですから、生徒たちは、現地の言葉やイラストを駆使してメッセージを伝える努力をしていました。

聖徳学園では、今年東京大学への合格者を輩出しました。PBLとグローバル教育、さらに英語やICTが組み込まれる学びが、大学進学準備という側面からも評価されるようになる日も近いのではないでしょうか。

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