PBL

香里ヌヴェール学院 モヤ感が深い学びを生む

2017年4月、香里ヌヴェール学院は、校名変更、共学化を果たし、21世紀型教育改革を立ち上げた。学院長石川一郎先生は、2冊の教育関連書籍を出版し、全国各地から講演依頼を受けている21世紀型教育改革の旗手である。

そして、4月24日、NHKのEテレ「テストの花道 ニューベンゼミ」に出演。正解が1つではない2020年大学入試に頻出されるはずの問題の案内人としてゲスト出演したのだ。番組の中で、そのような典型問題として、2017年中学入試で同学院が出題した「思考力入試問題」も紹介した。

この「思考力入試問題」こそ、香里ヌヴェール学院の人気を生み出した奥義でもある。by 本間勇人 私立学校研究家

 

(香里ヌヴェール学院は、PBL型授業研修と思考力入試問題作成プロジェクトの活動が、毎月のように開かれている。)

同校にとって、思考力入試問題は、21世紀型教育改革のアドミッションポリシーのシンボル的存在。カリキュラムポリシーの柱の1つにPBL(プロジェクト学習)型授業があるため、そのエッセンスを問題に反映させている。PBLとは、生徒が「主体的・対話的で深い学び」を促進できるように、深イイ問題が投げられる。正解が1つではないから、最初はモヤ感満載なのだが、そこを仲間とワイガヤで議論したり調べたりフィールドワークに出かけしながら、新たな問いに気づく。

そのとき生徒は、あのアハ体験をする。なるほど!そっかあ!というモヤ感の霧の中に一条の光を見出すのだ。やがて、新たな問題を解決しようとわくわくしてくる。そして、最優的にもくもく(黙々)探究の道へと没頭していく。

このような渦がだんだんと周りの知やネットワークを巻き込み、探究活動は広く深くなっていく。こんな知の道を、「思考力入試問題」で体験し、共感する生徒に入学してきてほしいというメッセージが込められている。

(思考を広げ深めるときに、マインドマップやベン図など「思考ツール」もフンダンに使う。中1の国語。)

そのアドミッションポリシーに映し出されているカリキュラムポリシーの象徴的存在は、中1のヌヴェール科や高1の探究ゼミ。見学しに訪れたときは、高1の探究ゼミが行われていた。

探究ゼミでは、ディベートや修学旅行のプロデュース、未来都市企画提案などクリティカルシンキングとクリエイティブシンキングをフル活用して、プロダクトをきちんと生産する探究活動を年間通じて行っていく。まさに本格的なPBL。チームでディスカッションする学びのスタイルは基本。

PBLのもう一つの特徴は、教師と生徒が共に学ぶという対話型。実は論理的に議論しいく際に、そのベースになるのは、合理的思考スキルより前に、互いに自由を承認するできる相互尊重の状態。絆がちゃんとないと話し合うことなどそもそもできない。教える教わるの関係には、ネットワークの相互尊重の絆が形成できないのだ。

探究ゼミでは、思考の成長も重視しているが、このように互いに尊重して協働作業ができる仲間作りのプログラムも仕掛けている。正解が1つではない問いを投げるのは、深い学びができるようにすることも目的だが、正解が1つではないからこそ、互いに刺激し合い、多くの気づきが生まれるからだ。実際、授業の振り返りにおいて、多くの感じ方考え方に新鮮な感覚を抱く生徒が多い。

そして、講義形式ではなく個性尊重と同時に協働スタイルで行うということを、生徒と共有するために、まずは学びにダイブしようというわけで、香里園は都会か田舎か?都会派と田舎派に分かれてディベートを行うことになった。作戦を立てるためにディスカッションは大いに盛り上がる探究ゼミとなった。

(高1の英語の授業もPBL型授業)

しかし、生徒にとって最も時間を費やす学園生活は各教科の授業である。そのため、この探究ゼミのようなPBL型授業をさらに凝縮して普段の授業にも実践していくというのが21世紀型教育改革。たとえば、モヤ感やわくわく感を内燃させる工夫として、高1の英語では、自己紹介の英語プレゼンテーションを行っていた。自分のことについて思いを巡らすことは、誰でも最も関心が高いことだからである。

語りたいというモチベーションが英語という言語能力を高めるのは、すでに多くの人によって実証されている。

また、“If could Fly”という英語の歌に耳を傾け、その歌詞の解釈や物語の構造についてディスカッションするシーンもあった。夢や恋について語り合うのは青春時代の特権。Growth Mindsetができあがるのだが、もちろん、この過程で仮定法を学んでいくのである。

(中1の英語は、ダイナミックイマージョン教育。)

中1の英語もインパクトがあった。いきなり20分間教師が英語でしゃべりまくった。生徒は、いったい何が起こったのか驚きモヤ感満載。それでもとにかく聞き取ろうとした。先生がしゃべり終えた後、いったい私は何を語ったのかと問うた。すると、生徒はクラスの知を結集して、こういったんじゃないかああいったんじゃにかとワイガヤになった。

先生の狙い通り。わからないなんて関係ないということに、生徒は気づいたのだ。おそれずに、まずは英語の海にダイブしようと。その後英語の歌に合わせてリズムをとったり、ゲームをしたりしながら、英語を学んだ。

英語のPBL型授業は、中学の初回の授業から、「英語を学ぶ×英語で学ぶ」というダイナミックなイマージョンの授業にたった。

かくして、香里ヌヴェール学院は、教師も学び生徒も学ぶPBL型授業が全面展開となった。石川学院長のもと、モヤ感から深い探究への道を歩むことになった。なるほど「テストの花道」のプロデューサ―とシンクロするはずである。道を究める者どうしということであろう。そして、NHKという媒体と石川一郎先生の書籍と同校の教育活動が、子どもにとって何が大切かその種を運ぶことになろう。大いに期待したい。

 

 

 

 

アサンプション国際中高 イマージョン教育&PBL型授業 破格

今年4月から、校名変更、共学校化し、21世紀型教育改革を立ち上げたアサンプション国際。小学校は、昨年の段階でPBL型授業を完成実施し、大人気になった。

中高もいよいいよイマージョン教育とPBL型授業がさく裂し、教師と生徒の情熱的学びは全開。中高のイマージョン教育を中心とする様子を写真で追ってみよう。by 本間勇人 私立学校研究家

 

(昨年中3のときに、江川校長の哲学対話教室に参加した女子生徒が、新生アサンプション国際の高1に進級。PBLやイマージョン教育に大満足しているということだ。そして共学校にも。高1のオールイングリッシュの数学の授業の後で。)

実におもしろかったのは、2時間目終了後20分間のリフレッシュタイムがある。休憩時間が長いだけかと思ったら、食堂で、おやつを購入して食べても良いということだった。

(ランチではなく、午前中のおやつタイムのお菓子など)

21世紀型教育とは授業だけではなく、施設やリフレクションタイムなどの環境やリラックスした雰囲気もなければだめなのだろう。男子も続々食堂に集まってきた。つい今年3月まで、女子校だっただけに、とても新鮮。江川校長も、時間があれば、写真のように校長室を抜け出して、生徒と共に対話を楽しんでいる。何せ“Hungry is angry.”では困るのだと{微笑)。

3時間目、高1のイングリッシュクラスの生物の時間を見学。イマージョン教育だから、オールイングリッシュ。まだ授業は始まったばかりだから基礎的なことをやるのかと思いきや、進化論の基本原理という抽象的な概念を学んでいた。聴いているこちらの方が専門用語についていけない。スマホで密かに調べているうちに、サルから人間、人間からなにやら別のものに変化しているシルエットを出して、このような進化の可能性はあるかどうか生徒と対話しはじめた。

要するにICTやAIを活用している現在の私たちの姿を進化への可能性として捉えるべきかどうか、自然淘汰の原理から考えてみようというトリガークエスチョン。スリリングではないか。そうかと思ったら、今度は海の中の写真を見せて、生きている存在を探せと。グループディスカッションしてプレゼンするのだが、そもそも生きているということはどういうことなのかという本質的かつ基本原理を考察させるディスカッション。

イマージョン教育による生物のPBL型授業。そして、クリティカルシンキングとクリエイティブシンキングを発動するディスカッションやプレゼンテーション。こんな授業が3年間続いたら、彼らの頭脳はグローバル知として成長することは間違いないだろう。

4時限目は、生物と入れ替わりに数学の授業になった。もちろん、イマージョン教育だから、オールイングリッシュの授業。2時限目間に合わずに、見学することができなかったが、中1でも同じように数学のイマージョン教育によるPBL授業が行われている。

生物で使われた教室は、実はフューチャールームで、教室の壁全面ホワイトボード。だから、数学では、上記写真のように個人ワークをするも、その後は、チームになって、自分たちの学びのスペースを壁に確保し、ディスカッションする。

問題は変数を増やしたり、正負の数を追加したり、難度が上がっていくのだが、それだけではなく、チームごとに不等式を創り互いにチャレンジする創造的な次元まで展開していく。数学の不等式の解き方の学びでも創造的思考をフル回転する授業なのだ。

5時限目は、中1の英語。高1の授業から中1だから、そのギャップにかわいらしい驚きがあるかなとおもいつつ、見学したら、2枚の写真をみて、その違いを英語で表現せよという問答。英語のスキルというより、事実と意見を整理し、比較対象の思考スキルを徹底している。

それにしても、ネイティブスピーカーの先生方がたくさんいるのは凄い。それにみなタブレットやラップトップと電子黒板を自在に使っている。6月からは、生徒も一人一台になる。21世紀型教育改革は加速し続ける。

6時限目は、再びフューチャールームへ。高1の探究。全クラスがグローバルゴールズを契機に、社会や世界の問題を意識し、探究論文を仕上げる1年間という長期のPBL。今回は第1回目で、オリエンテーション。社会や世界に目を向ける前に、まずは自己を見つめる自己探求。仲間とお互いについて話し合い、自分とは何か思いめぐらす。マインドマップやベン図など思考ツールも活用しながらディスカッションしていく。

中高生は思春期という疾風怒濤のときを迎えている。話し合いながら、ときに自己沈潜しながら、自分を見つめ、そこを突き抜けて世界へ羽ばたく。そのための探究への道を、アサンプション国際の生徒は、仲間といっしょに歩み始めた。

以上は、すべて、4月24日3時間目から6時間目の授業。いかに毎日21世紀型教育が展開しているかが了解できるだろう。今後も大いに期待したい。

工学院 いまなぜカリキィラムリフォメーションなのか?

今年4月、高1のオリエンーションから始まって、様々な新機軸の実行に専念している平方校長と、要所要所で、かなり対話する機会をいただいた。校長の想いをまとめてみたい。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
(中2-Dのクラスで。哲学に!問いの探究に!カリキュラムマネジメントに!それぞれがぞれぞれのミッションを胸に)
 
2020年大学入試改革。これは日本だけの特別な話ではない。世界同時的に起きていることである。その改革の実行にどの国が速く着手できるかどうか。そして、その改革は雑駁に言えば、教育改革なのだが、正確には、カリキィラムそのものの改革なのだ。
 
大学の学部や学科が、よしあしは別として、新しい科学や学問領域を開拓せざるを得ない。第4次産業革命に対応できる専門知としての科学や学問は、20世紀と同じであるはずがない。
 
 
(中2-Dのクラスは四方の壁がホワイとボード。クラス目標「一人一人の個性を大切にして平和で明るいクラスをつくろう」が描かれている壁ボードにさりげなく、それを方程式に変換した痕跡があった!これも変化を生み出す創造的思考力。)
 
そうなると、そこに接続する高校の教育も変わる。英語を重視したり、理数系を重視したり、授業時間数を調整したり、経験主義的なカリキュラムにするのか系統主義的なカリキュラムにするのかということなども重要であるが、今までのカリキィラムのようにスキルと能力、まして既成の知識の習得や活用程度の改革では、いかにカリキュラムのフォームや時間数を変えたところで、第4次産業革命社会に対応する新しい科学技術や学問の領域を探究する活動に接続できないのだ。
 
知識がいらないとか、スキルや能力を重視すればよいという程度では高校生はうまく大学に接続できない。それでできる大学は、第4次産業革命に対応できない。大学に合格しても、生徒の未来を先送りするだけなのだ。
 
 
(2017年京都大学医学部特色入試の問いを探究。問いの作り方が、生徒の学力構造にどう関係するのか議論。)
 
何が重要なのか?それは新たな知識を生み出すスキルや能力の習得であり、その大前提である、新しい知識を生み出すコンセプトメイクやグランドデザインを描くという意味での創造的思考力なのである。
 
しかしながら、この創造的思考力は、個性あふれる才能そのものがエンジンだから、スキルや能力のように誰もがある程度等しく習得できるシステムではうまくいかない。
 
創造的思考力は、生徒一人ひとり違う才能から出発する。絵画や音楽、哲学、政治経済、ダンス、演劇、プログラミング、エンジニアリング、学問的探究などなど興味と関心が実はその生徒の才能の萌芽である。
 
そこから創造的思考を稼働させることによって、新しい絵画の手法が生まれたり、新しい響きが奏でられたり、新しい政治経済社会のコンセプトが生み出されたり・・・ということになる。
 
 
(グローバル社会は、多言語社会。高1のハイブリッドインタナショナルクラスは、工学院大学新宿キャンパスで中国語を英語で学んでいる)
 
たしかに今はポストモダンイズムの時代であるが、まだまだパラダイムそのものがモダニズムにとって変わったわけではない。歴史が変わるというのは意匠が変わるだけではない。その背景にあるものの見方や価値観、つまりコンセプトやグランドデザインが変わるとき、はじめて変わったということになる。
 
そんなことが起こるのだろうか。可能なのだろうか。それは、一人ひとりが個性を創造物に変えようと集合天才の動きができてやっと変わる。
 
 
(新宿キャンパスでは、哲学と数学の授業も。オールイングリッシュの授業。)
 
なぜ変わらなくてはいけないのか?グローバルゴールズの設定を何も感じない人はいないだろう。自分が20世紀型社会を安心安全な地帯だと思っているうちは、そのゴールは達成されない。あまりに多様で深い世界の痛みはおさまることがない。
 
それでよいのか?それでよいと思う人もいるだろう。しかし、なんとかしなくてはならないという人もいる。その数が多ければ多いほど、時代の変化を望む意識や声は大きくなるだろう。
 
しかし、そのとき、そう思っている人々の中のほんの一握りの天才が世界の痛みを解消する方法を編み出したところで、元の木阿弥なのだ。
 
 
そういう想いを持った人々が、みな個々の才能を創造的思考を通して、新しいものや価値観を生み出す必要があるのだ。そのウネリが臨界点に到達したとき、音を立てて時代は変わるのである。
 
だから、知識、スキル、能力を育成するカリキュラムだけではなく、才能を育成するカリキュラムが必要になる。才能までは、今までは考えられてこなかった。では、それはいかにして可能か?そこに挑もうとしているのが、校長平方先生をはじめとする工学院の先生方なのだ。
 
工学院の先生方は、幾つもプロジェクトに分かれ、才能を生み出すカリキュラムを開発しているのだが、今までのように知識、スキル、能力をブラッシュアップするだけでは、新しいカリキュラムは生まれない。
 
したがって、コンセプトやグランドデザインを描く方法を学ぶプロジェクトが立ち上がっている。それは哲学や問いを探究することに等しい。だが、なぜこんなプロジェクトが必要なのだろう。
 
それは、今年の高1から新しいカリキュラムリフォメーションが起こっているからである。この改革によって、八王子キャンパスにおいても新宿キャンパスにおいても、大学の教員や外部講師とコラボするカリキュラムが驚くほど増える。
 
その場合、工学院大学や外部の講師と工学院中高の教師のチームティーチングになる。そのとき教師は講師とコンセプトやグランドデザインについて、いつも話し合い、共有し、振り返り、改善し、深めていく対話思考が必要だ。
 
それゆえ、知識、スキル、能力を伝授する教授方法以外に新たなコンセプトやグランドデザインの創り方を生みだそうとしている。
 
人はとかくそんな迂遠な方法より目先のことにとらわれてしまう。工学院の先生方も例外ではないが、重要なことは、その状況から脱皮しようと、工学院の先生方は日々学んでいる。
 
コンセプトやグランドデザインの創り方のような果てしない物語に耐える段階から楽しみ、そしてそれを実践していくようになる学びを新しいカリキュラムの試行錯誤を通して生徒と共に学んでいる。
 
学びは、外部世界と自分の精神と他者のつながりを好循環なものにしていくことだ。それには多様な才能の開花が必要となろう。既存の知識の体系だけでは、そのつながりは分断される。
 
未来は、いまここでその分断をぶち破り、新しいつながりを生み出していく創造的思考にかかっている。平方校長をはじめとする工学院の教師に期待がかかるのは、こういうわけである。
 

東京女子学園 教師と生徒が学ぶ組織

今年3月、東京女子学園は、今までプロジェクト単位で行ってきた学習する組織が、一転して全体に広がった。それは、iPadが教師全員に配られたからだ。今のところは、企業が作成したWeb ベースの学習システムの活用方法を日々研鑽しているが、クラウド上の教材やアーカイブうなどを活用し、テストもできるから、たんなる技術面の話ではなく、授業や面談のあり方も大変化することになる。by 本間勇人 私立学校研究家

何よりも5月から生徒全員が所有するようになる。すると、授業風景はあっという間に一変するだろう。そのシーンは、デジタル・ネイティブの子供のいる家庭はだいたい想像がつくだろう。そして、そうでないときの授業に比べてワクワクする気持ちを抑えられないだろう。

しかし、本当のおもしろさは、これからなのである。現状の学習システムは、スキルと能力の徹底した管理システムで、大学合格実績を大いに向上するのに役立つだろう。ところが、昨今共学化の波がおさまらない時代だ。それだけでは、女子校としては、共学校を突き抜けることができない。波に押し切られてしまう。

特に、日本社会は、先進諸国の中で、女子の社会進出は低く、ジェンダーギャップの格差もありすぎる酷い社会だと世界から観られている。グローバル社会にあって、何よりこの汚名を払拭しなければならないときに、それが唯一可能な女子校という拠点が消えていくのはなんとももったいない。

哲学の土台のある東京女子学園であればこそ、そこは極めて重要なミッションだ。

実は、東京女子学園は、この抑圧社会日本を幸せに導く教育のプログラムが潜在的にある。それは昨年、プロジェクトチームが中心となってつくった「地球思考コード」である。これは、東京女子学園が教育で行っていく思考力の広さと深さのチャートになっている。つまり、知識・スキル・能力のみならず1人ひとりの才能を開発する教養の幅を示唆している。

授業やテスト、面談は、このコードに紐づいて行われるのだが、昨年まではそれはすぐにできなかった。なぜなら、それにはICTによって、地球思考コードごとに成績推移が集計される必要があったからだ。

今回の教師も生徒もiPadを1人1台使えるようになったことで、このことが可能になる。もちろん、その開発には涙ぐましい研究と研鑽が必要だ。しかし、それは教師にとっても生徒にとっても未知との遭遇を意味する。まだ、どこの学校でもそれを行っていない。だからこそ、挑戦する価値があるのだ。

授業という「いまここ」での未知との遭遇。それは教師と生徒が共に学ぶ格好の場である。そして、その場は、日本社会の女性の生き方の希望の灯火となろう。それは、日本社会全体にとって善き知らせである。

工学院 前人未到の新教育イノベーション始まる

工学院大学附属中学校・高等学校は、前人未到の新教育イノベーションを開始した。戦後の学習指導要領の歴史は、J.デューイの経験主義教育とJ.S.ブルーナーの系統主義教育の両極の間を振り子のように行ったり来たりした。その過程でデューイの考え方やブルーナーの考え方は形骸化して、問題解決能力か知識暗記力かという浅薄な二元論に陥った。

21世紀型教育ビジョンを映し出している工学院は、どちらか一方を選択するのではなく、生徒の成長、生徒の生き方、生徒の変容、生徒の才能などに目配りした複合的な学びの理論やそれが育成される環境イノベーションを揃えてきた。by 本間勇人 私立学校研究家

(左から、奥津先生、岡部先生、松山先生、平方校長、島田先生、株式会社メイツ副社長伊藤氏)

新高1は、4月1週目、2泊3日のオリエンテーションを行ったが、その際のリフレクションは、タブレットやラップトップで入力、チェックボタンの項目は、瞬時に、スプレッドシートに書き込まれ、個人別、クラス別、男女別などの集計もまとまる。その段階でGrowth Mindsetの状態が、どうだったか先生方は共有できる。生徒と共に手ごたえを感じ、新高1の学園生活が始まったのである。

2週間後、上記写真のカリキュラムマネジメントチームが集まって、200字記述のデータ分析結果も掛け合わせて、生徒一人ひとりの状況やクラスの状況などをリフレクションをした。夏前にもう一度集計するから、生徒の変容など様々な特徴があらわれてくる。ふだん接している先生方のリアルな感覚と生徒が自己リフレクションしたときの感覚のマッチングを行うのだ。

このシステムは、今年一年行ってプロトタイプができるが、外部スタッフとのコラボレーションによってそれは可能になった。パッケージ商品を導入するのではなく、教師や生徒の実態に合わせて、リサーチ機能コンテンツをデザインし、分析システムをプログラミングしていく。教育コンテンツとエンジニアリングとデザイン思考。綿密かつ効率の良い会議システムの流れによって可能になる。

リアルスペースにおける会議は1時間と決め、その前後で、共有ファイルや共有議事録に書き込みながら、課題意識をシェアして立ち臨む。議論は、何を解決し、次にどう生かすか。さらに何を行うか。

カリキュラムマネジメントシステムとは、「思考コード」をベースに知のマネジメントをしていくことだが、その知を限りある時間の中で、生徒が最大限力を発揮できるようにする舞台裏の強力なサポートシステムこそが重要である。

この領域は外からなかなか見えない。授業という領域で、21世紀型教育の教育イノベーションは華やかに見えるが、それは氷山の一角。水面下にあるサポートシステムは複雑複合的。学習理論とカウンセリングマインド。データサイエンティスト的視点、そしてエンジニアリング頭脳。これらが効率よく循環するシステムが欠かせない。言うまでもなく、この部分は、今までの学校になかった新教育イノベーションである。

 

アサンプション国際と香里ヌヴェール学院 本機構に加盟

大阪カトリック2校であるアサンプション国際と香里ヌヴェール学院が、いよいよ21世紀型教育機構に加盟。両校は、昨年、21世紀型教育改革、共学校化を宣言し、PBL、イマージョン教育、ICT教育の研修を行ってきた。その過程で、カトリックの精神であり、国連のあらゆる宗教、民族、性別を超えた共通の理念でもあるman for othersというMFOマインドを共有し、世界の痛みを解決するグローバルシチズンシップというメンタルモデルをもった学習する組織が出来上がった。

そして、今春、その両校の協働改革は、小学校と高校の大人気という結果を導いた。もちろんこの改革は始まったばかりである。来春小学校、中学校、高校とすべてにおいて大反響を得るべく日々熱心に取り組んでいる。

そのインパクトはすでに、関西圏の教育に子どもたちの未来のための21世紀型教育改革をという大きなウネリを生み始めてもいる。

大阪カトリック2校の21世紀型教育改革のトータルリーダーは、聖パウロ学園の理事長であり、21世紀型教育機構の副理事長でもあり、何といっても、日本カトリック学校連盟会長である高橋博先生が辣腕をふるっている。

(高橋先生は、ご自身の学校である聖パウロ学園の21世紀型教育改革の研修のファシリテーターも行っている。)

アサンプション国際中学校・高等学校の校長は、江川昭夫先生。自ら英語の教師として、校長哲学対話をアルベール先生と実施。英語も使って生徒と対話する実践的改革を行っている。

香里ヌヴェール学院の改革リーダーは、石川一郎学院長。「2020年の大学入試問題(講談社現代新書)」「2020年からの教師問題{ベスト新書)」の執筆でも有名で、日本全国を飛び回って講演活動もされている。最先端の21世紀型教育を香里ヌヴェール学院の先生方と共に創っている。

21世紀型教育機構加盟校は、東京から埼玉、静岡、大阪へと全国に広がり始めた。この21世紀型教育改革を断行することは、子どもたちと共にいまここで未来を手に入れることを意味する。全国に広がること。それは希望が同時に拡大することである。

八雲学園 共学化への準備着々 St.Andrew’s School Turiとの交流

2018年度から共学校に転換する八雲学園。その理由は多角的であり、複合的であるが、決定的なのは、ラウンドスクエアに加盟したことだ。IB(国際バカロレア)創設時の中心人物クルト・ハーンが、世界のエスタブリッシュな私立学校の協働態であるコミュニティを創設した。by 本間勇人 私立学校研究家
 
 
(いっしょに歌って、踊って、心を響かせて交流は盛り上がった。ケニアの中1の男子が、日本語で涙そうそうを熱唱した時、八雲生は全員スタンディングオベーションで称えた。)
 
 
八雲学園中学開設時に姉妹校になった全米でもトップクラスのケイトスクールもこのラウンドスクエアに加盟している。姉妹校ケイトスクールとは互いに教育力において刺激し合ってきたので、4年前から八雲学園もラウンドスクエア加盟の準備をしてきた。
 
その準備の出発点が3ヶ月留学である。毎年選抜された高1生12名を対象に、UCサンタバーバラで、八雲学園特注の留学プログラムを実施している。
 
 
(交流前は、まずはパワーランチ。腹ごしらえしながら会話は弾む)
 
すでに中学3年間の英語教育集大成プログラムとして、全員参加のサンタバーバラ研修旅行があり、八雲学園のハイレベルな英語教育は有名だが、この3ヶ月留学は、グローバルエリートと共に学び、議論し、世界の痛みを創造的に問題解決する力を身に着ける超ハイレベルな英語による高次思考力とグローバルリーダーを養成するプログラムなのである。
 
あれから4年たって、国際会議で英語を使って議論ができる生徒が学内に40人以上誕生した。実は3ヶ月留学から戻ってきた生徒のための授業にエクステンションクラスがあるが、そこには留学に行ってなくても英語力がCEFR基準でB2ぐらいあり、意欲の高い生徒は参加できるので、年々その数は増えている。
 
 
(音楽交流は、まず八雲学園のドリル部から。迫力と艶やかさに衝撃が伝わった。)
 
実際3ヶ月留学一期生は、今年卒業したが、その大学進学実績はなかなかのもの。国公立大学、上智大学、立教大学などに進学しているが、海外大学に進学する生徒も現れた。私大は合格しているが、再度国立大学医学部に向けて準備を開始した生徒もいる。
 
しかし、最大の成果は、世界のエリートと頻繁に交流できるようになったことだ。すでに5年前から、ケイトスクール以外にイエール大学との国際音楽交流会を行っているが、いよいよ42か国170校が正会員として加盟しているラウンドスクエアの学校と交流が始まったのである。
 
 
(静かな祈りのような音楽からステップを踏みながら明るく楽しく歌まで1時間の公演だった。)
 
この170校の学校は、当然海外修学旅行を行っているが、旅先の大使館などにより、そこからラウンドスクエア加盟校も立ち寄るのがルーティンとなっている。今回も、ケニアのSt.Andrew’s School Turiの生徒29名が、八雲学園から徒歩15分のところにあるケニア大使館に立ち寄ってから、加盟校としての八雲学園を訪れるというサプライズ国際交流があった。
 
八雲学園も、すでにサンタバーバラに行ったときは、ケイトスクールと交流しているわけだが、これは年間スケジュールできっちり準備して行われるものだ。しかし、今後はSt.Andrew’s School Turiのように、日本に訪れたら、八雲学園との交流オファーを突然してくるという機会は多くなるだろう。
 
 
(八雲学園の吹奏楽の迫力と美しさも共有。)
 
St.Andrew’s School Turiのように、周りの国々のエリート層の子弟が集まってくる全寮制の私立学校が多いため、日本では想像できないようなノーブレスオブリージュな生徒ばかりの集団が訪れるのだ。
 
外交官などの子弟が駐在先で学校を選択する時、IB認定校とラウンドスクエア加盟校の2つを持っている学校をまず探すと言われウ程だ。交流する際には、ウェルカムの精神と高度な言語能力と高次思考力と何と言っても教養が必須となる。
 
 
(吹奏楽の演奏に驚きと満足の表情のSt.Andrew’s School Turiの生徒)
 
幸い八雲学園はもともと教育総合力を重視していたために、このようなサプライズ国際交流への対応力を身につけることができた。
 
そして、このラウンドスクエアの潮流は共学校である。となれば八雲学園も共学校になるしかない。これが八雲学園の共学化の根本的な理由である。
 
 
(別れ際、近藤校長自ら空手を伝授するシーンも)

工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(3)ザ・リフレクション

オリエンテーション3日目最終日は、3つのリフレクションプログラムが実施された。1つ目は、校歌の練習を通して、伝統に流れる普遍的精神の響きを共感した。
 
2つ目は、3日間のオリエンを通してのリフレクション。Growth Mindsetができたかどうか、自分軸を自己認識できたかどうか、iPadやノートパソコでWebベースの回答フォームにチェックボタンをクリックしたり、200字記述の回答を書き込んだりした。
 
 
(吹奏楽部などで活躍している内進生のクラスが、デモンストレーションを行って、そのあと全員で合唱。)

3つ目は、一文字漢字に想いを込めた各クラスのアイデンティティを発表。
 
工学院の校歌の中には、「雨に嵐に、うち耐えて」という文言がでてくるが、合唱の響きの中に、オリエンのプログラムでも体験した「プラス思考」や「コラボレーション」というスキルの重要性を想起したに違いない。
 
「学び舎」という文言には、まさに今回のワークショップ型合宿プログラムに映し出された工学院の学びの環境を想起しただろう。
 
 
「貫き徹おす 真心」には、メンタルモデルとしての「自分軸」を今後どのように徹底していくのか、「重き使命」には、自分と他者とが共生できる世界をいかに開いていくのかを想い描いてきたオリエンのプログラムをリフレクションすることにつながったと思う。
 
Web ベースで書き込むオリエン全体を通してのリフレクションは、多様なプログラムや授業をやりっ放しにせずに、生徒一人ひとり、それぞれのクラスの強み弱みをリフレクションして見出し、さらに学習方略のヴァージョンアップを工学院全体でシェアしてくカリキュラムマネジメントシステム創出の第一歩を歩み出したシーンである。
 
メンタルトレーニングでも、プラス思考はリフレクションによって生まれてくることを確認したし、実はそれぞれのプログラムが終わるたびに、リフレクションを繰り返し実施してきた。<プロトタイプ→実践→思考→アウトプット→リフレクション→リファイン→・・・>の連続が肝だったのである。これによって、はじめて学びのポートフォリオが蓄積していくわけだが、従来の教育では、アナログで行われてきたものだ。
 
しかし、これだと、物理的時間が膨大で、生徒が個々でやり、AO入試や東大推薦入試などに挑戦する一部の生徒にしか適応されてこなかった。
 
 
メンタルケア、学習ケア、進路ケアは、従来の日本の教育では、どうしても生徒全体に行うことは難しかった。
 
欧米の名門私立学校などでは、1クラス12名くらいのサイズであるし、学費も年間300万くらいするから、チュータリングシステムも充実している。
 
日本の場合は、クラス担任のボランティア的行動に頼るしかなく、私立学校は日本全体の水準からみればはるかに面倒見がよいが、どうしても模擬試験の成績の集積で面談をしていくことが中心となり、1人ひとりの創造的才能発掘までには手が届かない。
 
 
新学習指導要領で、今回の同校のワークショップ型オリエンですでに行われている「主体的で対話的な深い学び(アクティブラーニング的視点で)」の活動が中心的柱とされているが、これを実行するために「カリキュラムマネジメント」をしなければならないことになっている。
 
しかしながら、日本全体の教育現場では、そもそも「主体的で対話的な深い学び」を実行できるかどうかもわからないし、「カリキュラムマネジメント」を行う指標すらない状態(工学院は思考コードという指標を独自に完成させている)である。そして、実はこのマネジメントは、2020年に生徒1人1台のタブレット型パソコンの活用という環境が前提になっている。
 
 
この理想的な学びは、先進諸国ですでに進んでいる21世紀型スキルの学びをモデルにしているようであるが、21世紀型教育の基礎が何もないところでは、絵に描いた餅で終わるだろう。
 
そういう意味で、工学院大学附属高等学校の新高1のカリキュラムマネジメントシステムは、学内のプロトタイプの範囲を超えて、日本の教育のモデルになるだろう。同校の教育それ自体が、社会に貢献することになるだろう。このアクションもまた、「挑戦 創造 貢献」という同校の理念の体現でもある。
 
300名弱の生徒が、カリキュラムマネジメントリーダーの岡部先生の説明と担任の先生方のファシリテーションによってサクサク入力していった。「自分軸」200字記述も3日間を振り返りながら、未来に想いを馳せた。
 
 
全員がフォームに入力するや、スプレッドシートに瞬時にデータが流れ込み、事前に行っていたサンプリングデータとの対比において、Growth Mindsetのスコアが119%という数値になった。学年主任の松山先生が、前日の夜の教師リフレクションミーティングで生徒の自己変革に大いに手ごたえを感じていると高校担当の先生方と共有していたが、それがスコアにも反映した。
 
カリキュラムマネジメントシステムの肝は、教師の豊かな感覚とデータの高感度な抽象性の重ね合わせである。両者が一致することは、もちろん重要であるが、ズレがあったとき、その理由を話し合うことによって、さらなる生徒の成長とそれをサポートする学びの環境を進化させることができる。
 
 
それから、最も大事なことは、学年やクラスというマクロ的なデータと生徒1人ひとりのマイクロスコアのズレをきちんとリフレクションすることである。
 
生徒の中には、「今回の合宿で、みんな話し合って、共感すべきところと違いを見出して尊重し合っている姿に感動した。でもまだそこに入っていけない自分がいることにも気づいた。今後の高校生活で、自分を変えていきたい」と率直に書き込んでいる生徒もいた。
 
岡部先生は、そういう自己認知ができるオープンな環境であったことは確かだけれど、それと生徒1人ひとりの状況は違うから、全体の雰囲気がよかたったからそれでよいというわけにはいかない。ただ足並みをそろえるだけではなく、1人ひとりの想いや価値意識を尊重したサポート体制が肝であると。それには、今回のデータをクロス集計や多変量解析して、カリキュラムマネジメントミーティングでビジョンのヴァージョンアップをする学びの方略を練っていく予定であると語ってくれた。
 
 
今までのように競争社会のときには、足並みを揃えるリーダーが勝ち組だったのだが、21世紀というハイブリッド化したグローバリゼーションの光と影が交錯するダイナミズムの中では、そのようなFixed Mindsetでは未来を創ることはできない。日本の教育を変えなければ、生徒たちの未来に備えられないという平方校長の意志は現場の先生方にも浸透している。
 
3つ目のプログラムは、オリエンのハイライト。各クラスの代表が、自分のクラスのアイデンティティを漢字一文字で表現し、その理由をプレゼンする。まさにGrowth Mindsetが大きく膨らんだ瞬間だった。
 
同校サイトによると、たとえば、こんなプレゼンとなった。
 
「3年間を自分の目標に懸けていきたいという思いでクラス目標は「懸」に決定。不安が期待へ変わり、絆を深めるいい経験になった。自分の主張の仕方を理解したりポジティブな考え方について学んだりする機会となった。」
 
 
「みな知り合いのクラスで2度目のオリエンでした。高校から入ってきた人たちとの新しいコミュニケーションが始まり新鮮でした。MoGの報告会があり、刺激を受けた。新しいことや新しい人に触れるチャンスはとても大切だと実感した3日間だった。」
 
なるほど、Fixed Mindsetが Growth Mindsetに開かれたオリエンテーション合宿だったのである。
 

工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(2)自分の殻を破る信頼関係

工学院大学附属高等学校の高1オリエンテーション2日目は、3つのプログラムが行われた。
 
1つは、International Language Houseのスタッフと協働してパフォーミングアーツを実施。英語イマージョンで、しなやかにエッジの効いたダンスとのびやかに歌う2つのミュージカルを全員で演じ切るプログラム。
 
 
(オリエン合宿の朝。ここから工学院の高校生活が始まる。)
 
 
2つ目は、交流分析手法で、自分のコミュニケーションが、相手に合わせてしまうものなのか、抑圧的だったり攻撃的だったりするのか、共感的なコミュニケーションを行うタイプなのか、自分のコミュニケーションを仲間と話し合いながらモニタリングしていくワークショップ。
 
3つ目は、「メンタルトレーニング講習」。東海大学の宍戸渉先生を招き、モチベーションを高める「目標設定」の方法や「プラス思考」が身体の表現にどう表れるのか、ペアワークしながら、互いにモニタリングしていくワークショップ。
 
パフォーミングアートでは、ブロードウェイで行われているミュージカルのダンスの振り付けをそのまま行うため、決してやさしくないが、大切なのは、まずやってみるという挑戦するマインドをかきたてること。
 
 
英語で歌いながら、しなやかにクールに踊ることに対し、恥ずかしがる自分の殻をいかにぶち破るのか。それは、生徒1人ひとりの中で衝撃的だった。
 
しかし、やりきる心根は、大切な体験だったし、才能あふれる生徒が、本番で演じる直前に、スタッフにスカウトされてソロを踊るというシーンも感動的だった。1人ひとりが、いまここで変わること、挑戦すること、協力すること、それぞれの才能を称えること、それを演じりきること。高1生それぞれが自分の殻の破れる音を、今回のミュージカルの響きに聞いたに違いない。
 
交流分析では、他者に合わせてしまう自分、攻撃的な自分が、ときどき顔を出すことを仲間との対話の中で再認識したり、ずばり指摘されたりして、いかに自分のポジティブな気持ちやネガティブな気持ちを伝えあえる信頼関係が大事なのか、これもまた衝撃的だったに違いない。
 
 
信頼関係は、自分が他者を受容し、一歩自分が踏み込むことで生まれる。つまり、小さな自己変容が創り出すことなのだ。自己変容は、他者との信頼関係を生み出し、結局新しい自分の可能性に気づく創造的なアクション。
 
メンタルトレーニングでは、自分の何気ない言動に、表情に、志の高い憧れの目標をつかめるかどうかヒントが隠れていることを体験。ペアワークによるモニタリングを通して気づいていくワークショップ。本気ジャンケンを行うたびに、互いに問いを投げかけ、応えていく。
 
そのときの言動や表情の反応の分析をし、「プラス思考」がどうやったら心に宿るのかワークショップが行われていった。パフォーミングアートで破れた殻をさらに脱ぎ捨てる。Fixed MindsetからGrowth Mindsetへの広がり。
 
 
しかしながら、このしなやかな精神は、メンテナンスが必要。放置しておくとすぐに逆戻りしてしまう。持続可能にする。それは、いかにしたら可能か?
 
その答えは、今回のオリエンテーションの一人ひとりにとっての衝撃的な体験の中にある。言いたいことが言える仲間。それでいて、互いに尊重できる関係。葛藤のない関係はいまも、これからもない。しかし、その葛藤をプラス思考に変えるも、マイナス思考に変えるも、仲間に支えられ仲間を支える自分次第。
 
そんな自分を常にリフレクション出来る仲間との関係、教師との関係を見つけ、築いていくこと。今回のオリエンテーションの目標の共有は達成されただろう。
 
 
 
「夕食後のホームルームで1・2・3・8組は春休み中にフィリピンとベトナムのMoGに参加した生徒たちの報告会を行いました。
それぞれの国がどんな問題を抱えているのか、現地の起業家がどのような狙いでビジネスに取り組んでいるのか、自分たちが悪戦苦闘を繰り返しながらどのように活動してきたのかを報告し、まだ活動は終わりでなくこれから先にも続いていくことなので、ぜひ多くの人に協力をしてほしいと訴えていました。
仲間が経験した貴重な体験を共有し、より多くの生徒の刺激になったように思います。」
 
このプログラムは、もともとはなかった。生徒が、自分たちのクラスのビジョンを共有するホームルームの対話の中で、企画が生まれ、先生方を説得して行われることになった。まさに起業家精神!このようなGrowth Mindsetが、高校から入学してきた生徒と共に大きくしていく3年間が、これから始まるのである。
 

工学院 高校1年 オリエンテーション合宿(1)自分を表現し、自分というキャラクターを形成する5つの要素の関係に気づくワークショップ

2017年4月、再び「高校1年」の季節が巡ってきた。しかし、今年の高1は、特別な意味を時代が付与している。すでに21世紀にはいって17年も経とうとしているにもかかわらず、まだ20世紀近代社会の光と影のうちその影の部分を払拭できないどころか、ますます混迷をきたしている時代であるため、いよいよ持続可能な社会の形成に挑む最終目標グローバルゴールズに向けて新しい知を身につけざるを得ないプレ学年という歴史的位置づけを背負わされている。
 
 
2020年大学入試改革とは、たんに大学制度や入試問題の表層的な変更を意味するわけではない。高大接続が、その新しい知を生み出す契機となる「事」を意味している。同時に、その新しい知がいかなるものであるか、実際には予測不能なぐらい産業構造や科学技術、脳科学、ICT技術などが急速に進化し、日常生活の制度設計の変化の速度を超えてしまっている局面に衝突している時代でもある。2020年の前夜、その最も不安定な時代にタイムスリップしたかのような15歳が、今年の「高1生」なのである。
 
この近代社会の前代未聞の歴史的ウネリの響きを感じて、社会の制度設計の意志判断にいよいよ参画する直前に立つことになる高1という年齢は、いまここで特別な意味を持った高1として迎えられているわけである。しかし、その特別な意味が、自分事として受け入れられる準備ができずに、その自己決着を先送りされたまま、高校に進学するのが、今に到る日本の教育制度の常だった。それゆえ、先進諸国の中でも未来に不安を抱き自己肯定感を抱けない高1生が多いという結果になっているのではないだろうか。
 
 
だからこそ、工学院大学附属高等学校は、平方校長、高1学年主任の松山先生を中心に先生方一丸となって、この歴史的なウネリの響きを感じつつ、いまここで自己を見つめ、自己の可能性に気づき、その可能性が他者にどのような影響を与えるのかを、仲間と共に語り共感しながら、未来のビジョンを開くオリエンテーションを開始した。by 本間勇人 私立学校研究家
 
工学院の高1のオリエンテーションは、ヒルトン小田原リゾートで行われる。まるまる3日間、生活を共にして語り合い、議論し、自己を見つめ、他者を想い、未来の社会と自分をイメージしていく。
 
初日は、自分という人間を表現する漢字一文字を選択する意志決定をするところから始まった。漢字の意味と自分の想いや考え方、価値観、生き方などの背景文脈をつなげていく。自分のメンタルモデルを内側から明らかにしていくワークショップ。
 
 
しかし、この段階では、まだ自分自身が気づいていない自分を表現するには到らない。あくまで、自分の見える部分を見渡しながら、自分の目標を決め、そこからバックキャストしながら自己表現をしていく。
 
次のワークショップは、自分というキャラクターを分析して、チームでその結果をどう考えるか対話していく。いろいろな人間関係の問題に直面したときに自分の選択判断に迫られる。自分は躊躇して行動できないとちょっと気持ちが苦しくなる。
 
 
そのとき仲間が躊躇しているのではなくて、まずはまわりの状況や他者の状況をしっかり知ってから、次に進もうとしているのではないのかと助言する。躊躇している自分というネガティブなお思い込みを払拭して、先に進めるわけだが、このような対話の千行は、なかなかキツイ。
 
 
(ハイブリッドインターナショナルクラスのホームルームでは、クラスのビジョンを英語で共有)
 
しかしながら「知る」ということが、見える物だけを組み合わせて成り立つわけではないことに気づくセンシティブな過程は、仲間がいるから不安や恐怖から逃げないで立ち臨めるという大切な経験を積み重ねてける学校だということが了解できるようになっていく。
 
そして、なんといっても、今回は高1担当の先生方だけではなく、高校2年、3年の担当の先生方も全員がファシリテーターとして参加している。ふだん授業でPBL(プロジェクトベーストラーニング)を行っているので、チーム学習がベースのワークショップ型オリエンテーションは先生方全員による内製的なプログラムとして実行できてしまっている。
 
 
(熱く語る学年主任松山先生)
 
もちろん、このようなオリエンテーションのPBLは、パッションベーストラーニングという性格が前面にでてきているのではあるが。そのため、ワークショップとワークショップの間の時間や就寝前のホームルームでは、生徒のンマインドはオープンになりクリエイティブな精神が膨らむ。明日のプログラムの一部を隣のクラスと合同でできないかと、先生に交渉しにやってくるメンバーがはやくも立ち現れるシーンも生まれた。
 
 
(プログラムのヴァージョンアップの交渉にやってきている生徒)
 

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